サンリオピューロランドを劇的に V字回復させた立役者として注目を集める、サンリオエンターテイメント社長の小巻亜矢さん。2019年12月05日現在、彼女が歩んできた道のりは、まさに波乱万丈という言葉がふさわしいものです。社内ベンチャーを立ち上げ、女性の自立を支援しようと決意した矢先、彼女を襲ったのは48歳での「乳がん」宣告でした。
友人の検診に付き添った際に偶然見つかった病魔に対し、小巻さんは驚くほど冷静でした。やりたいことを見つけたばかりの自分を終わらせたくない一心で、迷わず乳房の全摘出を選択します。さらに翌年には子宮筋腫などの影響で子宮も摘出することとなりましたが、女性の象徴ともいえる部位を失ったことで、彼女の心には逆に「1秒も無駄にできない」という大胆な覚悟が宿ったのです。
自己理解への渇望と51歳での東大大学院挑戦
手術からわずか数カ月後、彼女は初志を貫徹し女性支援の会社を設立します。子育てに悩み、自分を責めてしまう母親たちと対話する中で、小巻さんは「自分を深く知ること」の重要性を痛感しました。誰かを救うためには、まず自分自身と仲良くする方法を学問的に突き詰める必要があると考えた彼女は、51歳という年齢で東京大学大学院への受験を決意したのです。
受験直前の体調不良に、当時大学生だった長男から「まだ1週間もある」と励まされたエピソードは、SNSでも「親子の絆に涙が出る」「何歳からでも挑戦できる勇気をもらった」と大きな反響を呼んでいます。見事合格を果たし、最年長学生として学び始めた彼女が修士論文のテーマに選んだのは「対話的自己論」でした。これは、自己を固定されたものではなく、他者との関係で変化する多様な集合体として捉える心理学的な考え方です。
「本当の自分」なんていらない。多面的な自分を愛する知恵
小巻さんは、「自分探しの旅」という言葉に潜む幻想を優しく否定します。私たちは状況や相手によって、母親、社員、娘といった具合に役割を演じ分けますが、その変化する姿すべてが「真実の自分」なのです。一貫性がないことを責める必要はありません。ネガティブな思考に囚われがちな現代の女性たちへ、彼女は「色々な自分がいていい」という、対話的自己論に基づいた救いのメッセージを送っています。
私は、小巻さんの歩みこそが「サンリオ」が掲げる「みんななかよく」の精神を体現していると感じます。絶望的な病を克服し、学びを通じて自己を解放した彼女の言葉には、統計や理論を超えた圧倒的な説得力があります。自分を一つの枠に閉じ込めず、多面的な自分を肯定することこそ、現代を生き抜くための最強の処方箋になるのではないでしょうか。
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