日本の伝統文化である日本酒が、今まさに花の都パリで新たな歴史の1ページを刻もうとしています。山形県鶴岡市に拠点を置く注目のスタートアップ企業「WAKAZE」は、2019年11月15日よりフランス・パリでの現地醸造を開始することを発表しました。これは単なる海外進出ではなく、現地の風土を醸造プロセスに取り入れるという、これまでにない革新的な挑戦です。
今回のプロジェクトの鍵を握るのは、徹底した「現地化」にあります。原料には南仏カマルグ地方で収穫されたジャポニカ米を採用し、仕込み水には現地の硬水を使用します。さらに特筆すべきは、日本酒酵母ではなくワイン用の酵母で醸造を行う点でしょう。この大胆なアプローチはSNS上でも「どんな味わいになるのか想像がつかない」「ワイン文化の聖地での挑戦が楽しみ」と大きな期待を呼んでいます。
醸造拠点となるのは、パリ近郊に新設された酒蔵「クラ・グラン・パリ」です。ここには12基のタンクが並び、洗米機や蒸し器といった中核設備こそ日本から運び込まれたものの、その他の多くの機材は現地で調達したワイン用機器が活用されています。こうした柔軟な姿勢こそが、伝統的な枠組みに縛られないWAKAZEらしさの象徴といえるのではないでしょうか。
実は、日本国内で新しく「清酒」の製造免許を取得することは、現行の法規制によって極めて困難な状況にあります。WAKAZEはこの壁を逆手に取り、自由な酒造りが可能な海外へと飛び出しました。日本では「どぶろく」などの醸造にとどまらざるを得ない現状を打破し、世界中の人々に「SAKE」の真の可能性を届けようとする彼らの情熱には、同じ日本人として胸が熱くなります。
気になるファーストロットの出荷は、2020年の年明けを予定しているそうです。まずはクラウドファンディングの支援者に向けて750ミリリットル瓶が2000本届けられ、その後はフランス現地での一般販売が始まります。ワインのように硬水とワイン酵母が織りなす濃厚な一杯は、きっとこれまでの日本酒の概念を心地よく裏切ってくれるに違いありません。
ここで少し専門的な解説を加えますと、一般的な日本酒はカルシウムやマグネシウムの少ない「軟水」で造られますが、パリの「硬水」を使うと発酵が促進され、しっかりとした骨格のある味わいになりやすいのが特徴です。また「ワイン酵母」を用いることで、リンゴ酸のようなフルーティーな酸味が際立ち、洋食とのペアリングにおいて最高な相性を発揮するはずです。
私個人としては、こうした「現地のテロワール(風土)」を尊重した酒造りこそが、日本酒が真の「世界のSAKE」へと進化するための最短ルートだと確信しています。日本から輸出するだけでなく、その土地の米と水で醸されるからこそ、現地の食文化に深く根付くことができるでしょう。パリの街角で、誰もが当たり前のようにWAKAZEの酒を嗜む光景が目に浮かぶようです。
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