日本の歴史の常識を覆し、この地にも旧石器時代が存在したことを証明した群馬県の岩宿遺跡。1949年(昭和24年)に相沢忠洋氏によって発見されたこの遺跡の発掘から、2019年はちょうど70年という節目の年を迎えています。地元の公民館などでは、狩猟や採集によって命を繋いでいた遠い先祖たちの暮らしにスポットを当てた講演会が連日のように開催されており、歴史ファンを中心に大きな盛り上がりを見せています。
SNS上でも「日本人にルーツがあることを実感する」「教科書で見た岩宿の衝撃を思い出した」といった投稿が相次ぎ、改めて古代への関心が高まっているようです。2019年11月に参加した講演会では、非常に興味深い海外の研究成果が披露されました。それは、旧石器時代の人々が「未知の開拓」と「既存エリアの深掘り」という、性質の異なる2つの行動を同時並行で行っていたという事実です。
生存をかけた「探索」と「深化」のバランス
当時の人々は、食料資源の枯渇を防ぐために常に新しい土地を探る「探索」を欠かしませんでした。その一方で、慣れ親しんだエリアで確実に獲物を仕留めるための「予測」という、いわば知見の深化にも励んでいたのです。この二段構えの戦略こそが、過酷な自然環境を生き抜くための絶対条件だったといえるでしょう。現代のビジネスシーンにおいても、この「両刀遣い」の姿勢は驚くほど共通しているように感じられます。
現在の激しい市場競争の中で企業が生き残るためには、これまでの成功体験に固執するだけでは不十分です。まだ土地勘のない分野へ果敢に飛び込み、新しい技術や優秀な人材を確保するイノベーションの種探しが求められています。これを専門用語では「知の探索」と呼びますが、一方で目先の利益を支える既存製品の改良や効率化、すなわち「知の深化」も疎かにはできません。このバランスこそが、企業の寿命を左右するのです。
人類は狩猟社会から農耕、工業、そして情報社会へと劇的な進化を遂げてきました。しかし、生き残るための本質的な行動パターンは、数万年前から変わっていないのかもしれません。私は、いつの時代も組織の進むべき道を示す「リーダー」の存在こそが、成否を分ける鍵だと確信しています。旧石器人のリーダーが新天地を目指す決断を下したように、現代の経営者もまた、未来への羅針盤となる役割を担っているのです。
これから訪れる、AI(人工知能)が社会の至る所に浸透する「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の時代。この高度な未来社会においても、未知を恐れず挑む探究心と、現実を冷徹に見極める力の両立は、ますます重要になるでしょう。2019年11月25日という今、岩宿の地から届いた古の知恵は、私たちが未来を切り拓くための大きなヒントを提示してくれているのではないでしょうか。
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