2019年06月18日、ドナルド・トランプ米大統領がついに正式な出馬表明を行いました。2020年11月の投票日に向けて、いよいよ大統領選の火蓋が切られたといってよいでしょう。現時点での世論調査では、トランプ氏の勝利を予測する声が過半数を占めており、共和党内での支持率も約9割と圧倒的です。一見すると、トランプ氏の再選は「盤石」であるかのように映ります。しかし、その足元では、これまでの常識を覆すような地殻変動が起きているのをご存知でしょうか。
注目すべきは、かつてないほどの異変が起きている南部テキサス州です。ここは長年、共和党が絶対に負けない「保守王国(レッド・ステート)」として知られてきました。1980年以来、共和党候補が全勝しているこの地は、ブッシュ元大統領親子の地盤でもあります。ところが、取材を進めると「テキサスはもはや保守の安住の地ではない」という悲鳴にも似た声が聞こえてくるのです。ダラスやオースティンといった主要都市では市長が民主党系になるなど、「共和党離れ」が現実のものとなりつつあります。
人口動態の変化と「シリコンバレー」からの流入
なぜ鉄壁の牙城が崩れかけているのでしょうか。その最大の要因の一つが、人口動態の劇的な変化です。テキサス州では、民主党を支持する傾向が強いヒスパニック系などの移民人口が急増しており、かつてマジョリティであった白人の割合は42%まで低下しました。さらに、生活費が高騰するカリフォルニア州などから、IT企業や起業家が続々と拠点を移しています。これにより、リベラルな思想を持つ有権者が流入し、政治地図を塗り替えているのです。
SNS上でも、現地在住とみられるユーザーから「最近、近所に引っ越してきたのは西海岸の人ばかり」「街の雰囲気が変わってきた」といった声が散見されます。かつての保守的な空気が薄れ、多様化が進んでいることを肌で感じている人が多いようです。2018年の中間選挙で、共和党の現職上院議員が民主党の新星ベト・オルーク氏に薄氷の勝利を収めたことは記憶に新しいですが、あの接戦は一過性のものではなく、こうした構造変化を象徴する出来事だったといえるでしょう。
トランプ氏自身の政策が招く「自滅」のリスク
もう一つの要因は、皮肉なことにトランプ氏自身の政策にあります。移民を敵視し、メキシコ国境に壁を建設しようとする強硬姿勢は、ヒスパニック系住民の怒りを買っています。さらに、メキシコへの制裁関税をちらつかせる通商政策は、メキシコ経済と深く結びついたテキサス州のビジネスに大打撃を与えかねません。地元の共和党員からさえも「トランプ流の保護主義にはついていけない」との声が漏れており、身内からの離反を招いているのが現状です。
もしトランプ氏がテキサス州を落とせば、再選への道は極めて険しいものとなります。大統領選は州ごとの勝者が選挙人を総取りする仕組みですが、テキサスは全米で2番目に多い38人の選挙人を擁する巨大票田だからです。ここを失うことは、事実上の敗北を意味するといっても過言ではありません。私自身、これまで「南部は共和党の指定席」と考えていましたが、その前提を捨てて情勢を見守る必要があると強く感じています。
揺らぐ南部、問われる選挙戦略
この「保守王国の異変」はテキサスだけに留まりません。共和党の牙城であったアリゾナやジョージアでも、民主党が勢力を伸ばしています。トランプ陣営は、前回勝利の鍵となった中西部の白人労働者層を固めるために、今後も移民規制や保護貿易をアピールするでしょう。しかし、その戦略が南部の多様な有権者を遠ざけ、結果として自らの首を絞めることになりかねないのです。
2020年の本選まで約1年半。盤石に見えるトランプ政権ですが、水面下では深刻な亀裂が走っています。世界中がトランプ氏の言動に注目していますが、これからは「南部の動向」こそが、世界の行方を左右する最重要ポイントになるはずです。かつてない波乱含みの展開が予想される次期大統領選、引き続き注視していきましょう。
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