2019年12月12日に投開票が行われる英国総選挙がいよいよ目前に迫っています。今回の選挙において、最大の焦点となっているのは欧州連合(EU)からの離脱問題ですが、その裏側で深刻な影を落としているのが英国経済の再生です。離脱の行方が不透明なまま3年以上が経過し、現場の企業たちはすっかり縮み上がってしまいました。
2016年6月に行われた国民投票以来、先行きが見通せない状況が続いたことで、英国の成長軌道は明らかに下振れしています。これまで好調を維持してきたサービス業にまで不安の波が押し寄せており、今回の総選挙はまさに国運を左右する大きな分岐点となるでしょう。与野党は財政支出を増やすことで景気回復を狙っていますが、現場が求めているのは何よりも「安心」なのです。
経済指標を見れば、その苦境は一目瞭然です。2019年07月09月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比でわずか1.0%の増加にとどまりました。これは2010年01月03月期以来という、歴史的な低水準です。シンクタンクの推計によれば、もしEUに残留し続けていた場合と比較して、英国経済は約3%も縮小してしまった計算になります。
「投資の冬」がもたらす製造業への深刻なダメージ
今回の経済低迷において、最も大きな打撃を受けたのは「設備投資」です。設備投資とは、企業が将来の利益のために機械や工場などを新しく導入することを指しますが、この動きが完全に止まってしまいました。EUとの貿易に壁ができるリスクを恐れ、特に自動車などの製造業が投資を控えている現状は、将来の競争力を奪う致命的な事態と言えます。
SNS上では「地元の工場が設備更新を諦めた」「このままでは英国から産業が消えてしまう」といった悲痛な声が拡散されています。数字を追うと、2016年04月06月期からの約3年間で、企業投資の伸びは実質0.4%増という、ほぼ横ばいの状態です。英中央銀行は、もし残留していれば13%は伸びていたはずだと試算しており、その差はあまりにも残酷です。
海外からの投資マネーも、まるで潮が引くように去っています。英国際貿易省の発表によれば、2019年03月31日までの1年間における直接投資プロジェクト数は1782件まで減少しました。これは3年前と比較して2割も減ったことになります。かつて「投資の玄関口」と呼ばれた英国のブランド力は、今まさに崩壊の危機に直面しているのではないでしょうか。
産業界は「とにかく不透明感を解消してほしい」と切実に願っています。仮に保守党が勝利して2020年01月末に離脱が実現したとしても、その先には新たな通商ルールの交渉という険しい山が待ち構えています。私は、政治の混乱が続く限り、企業の萎縮は解けないと考えます。今こそ、リーダーには明確なビジョンと経済への誠実な向き合い方が求められています。
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