新しいことに挑戦するのに、遅すぎるということは決してありません。2019年11月21日に掲載された、太極拳に励む植松百合子さんを紹介する記事「太極拳『六十の手習い』に」は、多くの読者に勇気を与える内容でした。還暦を過ぎてから未知の世界へ飛び込むその姿勢は、まさに生涯学習の理想形といえるでしょう。
しかし、2019年12月12日、この記事の内容に関して大切な訂正が発表されました。それは、植松さんが太極拳の奥義を記した書物である「拳論」を手にした時期についてです。当初は「数年前」と報じられていましたが、正しくは「三十数年前」という、非常に長い年月を経たエピソードだったことが判明しました。
ここで登場する「拳論(けんろん)」とは、太極拳の動作の根底にある哲学や理論を説いた専門的な理論書の総称です。ただ体を動かすだけでなく、精神性や気流を重んじる太極拳において、この書物を読み解くことは、その道の真髄に触れることを意味します。三十数年も前から大切に保管されていた事実に、驚きの声が上がっています。
SNS上では、この訂正を受けて「数年ではなく30年以上も温めていたなんて、物語の深みが違う」といった感動の声が広がりました。単なる習い事の域を超え、人生の長い時間をかけて醸成された情熱があったからこそ、60歳という節目での本格的な挑戦が結実したのだと感じずにはいられません。
私は、この「30年」という歳月の重みにこそ、人間が持つ知的好奇心の美しさが詰まっていると考えます。若かりし頃に手に取った一冊の本が、長い時を経て人生の後半戦を輝かせる鍵になるというのは、実にロマンチックではないでしょうか。一度諦めた夢や興味も、捨てずに持ち続けていれば必ず道が開けるのです。
今回の訂正は、植松さんの挑戦が決して一過性の思いつきではなく、四半世紀を超える長い伏線の回収であったことを示してくれました。私たちも、自宅の棚に眠っている古い本を読み返してみれば、未来の自分を支える「新しい挑戦」の種が見つかるかもしれません。一歩踏み出す力は、常に自分の中に眠っています。
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