2019年12月12日、マレーシアのダレル・レイキン貿易産業相は、東アジア地域包括的経済連携、通称「RCEP(アールセップ)」の今後について極めて重要な見解を示しました。難航するインドとの交渉を背景に、まずはインドを除いた15カ国での妥結を優先すべきだと強調したのです。この決断は、停滞する世界経済に新たな風を吹き込む一石となるでしょう。
RCEPとは、ASEAN諸国に日本や中国、韓国などを加えた広域的な自由貿易協定のことです。関税の撤廃や投資ルールの共通化を目指すこの枠組みは、本来16カ国で進められてきました。しかし、インドは自国の農業や製造業への打撃を懸念し、2019年11月に離脱を示唆しました。レイキン氏はインドの事情に理解を示しつつも、歩みを止めるべきではないと判断したのです。
SNS上では「巨大な経済圏が誕生する期待感」がある一方で、「インドが抜けることによる市場規模縮小を懸念する声」も上がっており、賛否が分かれています。しかし、たとえインドが不参加であっても、15カ国合計のGDPは約24兆6300億ドルに達します。これは全世界の約3分の1を占める規模であり、その経済的インパクトは計り知れないものがあるでしょう。
米中対立が加速させる「ビジネスの中心」の移動
現在、世界を揺るがせている米中貿易摩擦は、皮肉にも東南アジアに絶好の機会をもたらしています。レイキン氏は「米中離れが起き、ビジネスの拠点が東南アジアへ移る」と強気な見通しを語りました。実際に中国からの生産拠点移転が加速しており、2019年1月から6月におけるマレーシアへの直接投資額は、前年同期の約2倍となる495億リンギを記録しています。
こうした追い風を捉えるべく、マレーシア政府は大胆な投資誘致策を打ち出しました。今後5年間、有力企業やスタートアップを対象に、年間10億リンギ規模の税制優遇や補助金を提供するというのです。これは、単なる工場の誘致にとどまらず、ハイテク産業やヘルスケア、近代的な農業といった高付加価値な産業構造への転換を目指す国家戦略の表れと言えます。
私個人の見解としては、インドの慎重姿勢は理解できるものの、RCEPが15カ国で先行して発効することは、自由貿易の旗印を守る上で不可欠だと考えます。インドに対しても「妥結後に参加できる猶予」を設けるなど、柔軟な姿勢を見せるレイキン氏の手腕は見事です。日本企業にとっても、この新たな巨大市場の誕生は、供給網の再構築に向けた大きな転機となるに違いありません。
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