日本のエネルギー事情に、今、大きな歪みが生じています。2019年12月13日現在、世界的な供給過剰によって、液化天然ガス(LNG)の「スポット価格」は前年比で4割も暴落しました。それにもかかわらず、日本が実際に輸入している価格は1割程度の微減にとどまっており、家計や産業を支える電気・ガス料金への還元が進まないもどかしい状況が続いています。
ネット上でも「ガス代が安くなった実感がない」「世界市場とのズレが大きすぎる」といった、コスト高を嘆く声が相次いでいます。なぜ世界市場とこれほどの差が生まれてしまうのでしょうか。その理由は、日本が長年続けてきた「長期契約」の仕組みにあります。専門用語で「スポット価格」とは、その時々の需給で決まる時価のことですが、日本の輸入の大半は、過去の原油価格に連動する固定的な契約が主流なのです。
「原油連動型」が招くコスト高のジレンマ
日本の電力・ガス会社が調達するLNGは、10年以上にわたる長期契約がメインです。この価格は、3カ月から5カ月前の原油価格に基づいて算出されるため、最新のLNG需給が反映されにくい構造になっています。2019年9月に発生したサウジアラビアの石油施設攻撃や、産油国による減産合意の影響で、原油価格は底堅く推移しています。これが、LNGの市場価格が下がっても日本の輸入価格が下がらない「高止まり」の原因です。
一方で、世界のLNG市場は今や「買い手市場」へと変化しています。アメリカやオーストラリアで新たな生産拠点が稼働し、供給量は前年比で13%も増加する見込みです。しかし、スポット調達は季節や天候で価格が乱高下しやすく、供給の安定性を第一とする日本のインフラ企業にとっては、全てをスポットに頼るわけにはいかないという守りの姿勢も理解できます。しかし、これでは消費者が市場の恩恵を十分に受けられません。
脱・原油連動へ!日本のエネルギー各社による逆襲
こうした現状を打破するため、日本のエネルギー企業は調達の多角化に舵を切り始めました。JERAや大阪ガスは、2019年12月8日にアメリカのテキサス州でシェールガスの液化設備を稼働させました。シェールガスは岩盤層から抽出される天然ガスで、原油価格の影響を受けにくく、転売も自由という利点があります。これまでの「言い値」に近い契約から、自ら投資し、賢く市場を泳ぐ戦略へと進化しているのです。
編集者としての意見ですが、日本のエネルギー企業は今、単なる「輸入業者」から「グローバルなトレーダー」への変革を迫られています。世界的な供給過剰は消費者にとってチャンスであるはずです。企業がリスクを取って調達コストを抑え、その成果が透明性を持って家計に還元される仕組みが整うことを切に願います。各社の投資戦略が、数年後の私たちの生活を劇的に変える分岐点になるかもしれません。
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