北陸3県(富山・石川・福井)に深く根ざす主要な5つの信用金庫が、2019年4月1日から2019年9月30日までの半年間における中間決算を発表しました。今回の決算では、本業による収益力を示す「実質業務純益」が5信金中4信金で前年を上回るという、一見すると非常にポジティブな結果となっています。
「実質業務純益」とは、銀行や信金が本来の業務である預金や貸出、手数料ビジネスなどでどれだけ効率的に稼いだかを表す指標です。しかし、この増益の裏側を詳しく読み解くと、手放しでは喜べない地方金融機関の切実な現状が浮かび上がってきます。長引く低金利政策の影響で、貸し出したお金の利息と預けられたお金の利息の差である「利ざや」の縮小が続いているからです。
こうした厳しい逆風を跳ね返した最大の要因は、徹底したコストカットと「貸倒引当金」の戻り入れ益でした。貸倒引当金とは、将来の焦げ付きに備えてあらかじめ準備しておくお金のことですが、取引先の業績が改善すると、このお金を利益として計上し直すことができます。SNSでは「地道な経営努力の賜物だ」という称賛の声がある一方で、「店舗や人員が減るのは寂しい」といった地域住民の不安も漏れています。
富山と高岡の信金が見せた経営改善の底力
富山信用金庫は、2019年9月期において実質業務純益が前年同期比で33%も増加し、2億9100万円に達しました。店舗の統廃合や人員の適正化を断行し、6200万円もの経費を削減したことが大きな勝因といえるでしょう。山地清理事長は、専門スタッフを顧客企業へ派遣して販売促進のアドバイスを行うなど、単なる融資に留まらないコンサルティング機能の強化に確かな手応えを感じています。
同じく富山県の高岡信用金庫でも、純利益が前年比2.4倍の4億2300万円という驚異的な伸びを記録しました。しかし、吉岡周理事長は「手放しで喜んではいけない」と表情を引き締めています。その背景には、貸出金からの利息収入が5%も減少しているという現実があり、人件費削減や与信費用の抑制によってようやく利益を捻出している苦境が透けて見えます。
私は、こうした経営判断は非常に賢明であると評価しています。金融機関が自らの筋肉を削ぎ落として効率化を図る姿勢は、顧客である中小企業に対しても「共に痛みを分かち合う」という強いメッセージになるはずです。地方銀行が苦戦する中で、信金が持つ「地域密着型」のコンサルティング能力は、今後さらに重要性を増していくに違いありません。
福井と石川で進む「攻め」と「守り」の資産健全化
福井信用金庫は、前年に実施した制服刷新などの一時的な費用がなくなったことも手伝い、実質業務純益が47%増の13億2300万円と躍進しました。職員数の自然減による人件費抑制も効果を発揮していますが、現場からは消費増税の影響による景気の先行きを懸念する声も上がっています。同信金は今のうちに資産の健全化を急ぐ構えを見せており、リスク管理に対する意識の高さが伺えます。
一方、石川県では明暗が分かれる形となりました。のと共栄信用金庫は実質業務純益を2倍に伸ばしたものの、与信費用の増加により純利益は31%減少しています。また、金沢信用金庫は利ざやの縮小や手数料収入の減少に苦しみ、大幅な減益を余儀なくされました。こうした中、2020年9月24日に「はくさん信用金庫」として合併を控える北陸信金と鶴来信金は、わずかながらも増益を確保し、新体制への足掛かりを築いています。
これからの信用金庫には、単に「お金を貸す場所」としての役割を超え、地域のプロデューサーとしての役割が求められるでしょう。今回の決算で示されたコスト削減の努力を、いかにして次なる地域活性化の原動力に変えていけるかが、生き残りの鍵を握っています。北陸の経済を支える彼らの挑戦から、2020年以降も目が離せそうにありません。
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