これまで順風満帆な上昇を続けてきた不動産投資信託、通称「REIT(リート)」の市場に、冷ややかな風が吹き始めています。2019年11月には、市場の健康状態を示す東証REIT指数が7カ月ぶりに下落へと転じ、続く12月も軟調な展開が続いています。長らく続いた「REIT1強時代」に、一体何が起きているのでしょうか。
2019年12月13日の東京市場では、東証REIT指数が前日比1.4%安の2127.11を記録しました。直近12日間のうち11日も値を下げるという異例の事態に、投資家の間では動揺が広がっています。SNS上でも「ついに調整局面か」「利確のタイミングが難しい」といった、先行きを不安視する声が目立ち始めています。
金利上昇と投資マネーの流出
今回の変調を招いた最大の要因は、世界的な「金利環境の変化」にあります。REITとは、多くの投資家から集めた資金で不動産を運用し、そこから得られる賃料収入を分配金として投資家に還元する仕組みの商品です。そのため、安全資産とされる国債の金利が上がると、相対的にREITの投資的な魅力が薄れてしまう特性があります。
2019年12月10日には、国内の10年物国債利回りが一時9カ月ぶりにプラス圏へ浮上しました。さらに米中貿易交渉への期待から投資家が「リスクを取って株で稼ごう」という姿勢に傾いたことで、海外のヘッジファンドなどがREITから株式市場へ資金を足早に移し替えています。プロの投資家たちの動きは素早く、市場の潮目を大きく変えつつあるようです。
この動きは個人投資家にも波及しており、11月の投資信託の売買動向は6カ月ぶりに売り越しへと転じました。金利の低下を背景に資金が流入し続けていた「REIT神話」が、今まさに大きな岐路に立たされていると言えるでしょう。金利が上昇すれば不動産取得のローン金利も上がるため、運営コスト増を懸念する見方も強まっています。
ホテル系銘柄に漂う暗雲と2020年の展望
金利問題に加えて、特定のセクターにも懸念が生じています。特に逆風にさらされているのが「ホテル系銘柄」です。インヴィンシブル投資法人が2019年12月期の利益予想を下方修正したことは、市場に大きな衝撃を与えました。日韓関係の冷え込みや相次ぐ自然災害により、訪日客数が想定を下回ったことが背景にあります。
2020年には東京五輪というビッグイベントを控えていますが、楽観視は禁物です。ホテルの供給が過剰になる一方で、政府が掲げる「訪日客4000万人」の目標達成に疑問符が付けば、需給バランスが崩れる恐れも指摘されています。ホテル系は景気や社会情勢が賃料に直結しやすいため、慎重な銘柄選びが求められる局面でしょう。
一方で、オフィスビルを中心とした賃料収入は依然として底堅く、2020年9月には国際的な株式指数への組み入れによる巨額の買い需要も期待されています。私個人の見解としては、現在の調整は行き過ぎた過熱感のリセットであり、優良物件を持つ銘柄にとっては絶好の「押し目買い」のチャンスになる可能性も高いと考えています。
投資の世界に「絶対」はありませんが、リスクとリターンのバランスが変化しているのは事実です。今は闇雲に資金を投じるのではなく、金利動向や世界情勢を冷静に見極め、自身のポートフォリオを再点検するべき時期に来ているのではないでしょうか。市場が再び上昇気流に乗るのか、さらなる試練が待つのか、正念場を迎えています。
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