2019年12月07日現在、米中貿易摩擦という巨大な不確定要素を抱え、日本の株式相場は一喜一憂する不安定な展開が続いています。投資家の皆様の中には、年末年始の戦略に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。こうした荒波の中で羅針盤となるのが、「誰が、いつ、どの程度売買しているのか」という需給情報の把握です。
2019年11月27日には、東芝の株価が一時5%も急騰するという象徴的な出来事がありました。これは東証1部への復帰を期待した機関投資家が、将来的なTOPIX採用による買い需要を見越して動いたためです。企業の本来の価値(ファンダメンタルズ)だけでなく、こうした「誰が買いたがっているか」という需給のパワーバランスこそが、短期的な相場を決定づける要因となります。
市場の主役「海外投資家」の動きを追え
現在の日本市場で最も無視できないのが海外投資家の存在でしょう。彼らは東証の売買代金の約6割を占めるメインプレイヤーであり、一度方向性を決めるとトレンドを継続させる性質を持っています。実際、2019年11月11日から11月15日の週まで、海外勢は7週連続で買い越しを記録し、日経平均株価を力強く押し上げる原動力となりました。
一方で、個人投資家は株価が上がれば利益を確定し、下がれば買う「逆張り」の姿勢を鮮明にしています。また、年金基金の動向を映す信託銀行は、資産配分の比率を保つための調整売り(リバランス)を行うため、株価上昇局面では売り越しに転じる傾向があります。SNS上でも「海外勢の買いが続くなら強気でいける」といった、彼らの背中を追う声が目立っています。
裁定取引と空売り比率に隠された反発のサイン
相場の先行きを予測する上で「裁定取引」の残高にも注目が集まります。裁定取引とは、先物と現物のわずかな価格差を利用して利益を出す手法のことです。2019年9月初旬には現物の「売り残」が2兆円という異例の規模まで膨らみました。これは先物が売られすぎている状態を示しており、その後の買い戻し(売り残の解消)とともに日経平均は上昇へと転じています。
また、手元にない株を借りて売る「空売り」の比率も見逃せません。現在、景気に敏感な業種で空売りが蓄積されています。空売りは将来必ず買い戻す必要があるため、比率が高まりすぎると、わずかな反転をきっかけに買い戻しが連鎖し、株価を急騰させる燃料となるのです。こうした「踏み上げ」と呼ばれる現象を期待する声が、相場の水面下で強まっているようです。
個別銘柄で見る「信用倍率」の活用法
より身近な指標として、証券会社からお金や株を借りて売買する「信用取引」の残高があります。例えば吉野家ホールディングスでは、買い残に対して売り残が圧倒的に多い「信用倍率」が低い状態が続いています。新商品のヒットで株価が上がる中、さらなる上昇を懸念した売り方の買い戻しが、さらなる株価の押し上げ要因になるという見方が支配的です。
需給情報は、過去の記録であると同時に、現在の投資家たちの「ポジション(持ち高)」をリアルに映し出す鏡でもあります。企業の収益性といった基本分析に、こうした「市場の心理」を反映した需給分析を加えることで、投資の精度は格段に向上するはずです。まずは日本取引所グループが毎週木曜日に公開するデータをチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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