パソコンの心臓部ともいえる記憶装置の世界で、今まさに劇的な世代交代が起きています。2019年12月07日現在、ハードディスク駆動装置、いわゆるHDDの取引価格が下落の一途を辿っていることをご存知でしょうか。直近の2019年10月〜12月期における大口需要家向けの価格は、前の四半期と比較して約1%のマイナスで決着しました。これで4四半期連続の下落となり、市場の厳しさが浮き彫りになっています。
特にデスクトップパソコンで一般的に使用される3.5インチ型のHDDは、記憶容量1TB(テラバイト)の指標品が41ドル前後で推移しています。これは前年同期と比べると約6%も安い水準です。SNS上でも「バックアップ用には安くて助かるけれど、メイン機にはもう選ばないかも」といった声が散見され、ユーザーの意識が少しずつ変化している様子が伺えます。その背景にあるのが、競合する「SSD」の猛追なのです。
SSDの低価格化がもたらす「記憶装置」の勢力図激変
ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)とは、磁気ディスクを回転させて記録するHDDとは異なり、半導体メモリを使ってデータを読み書きする装置です。物理的な駆動部がないため、データの処理速度が驚異的に速く、パソコンの起動も一瞬で完了するのが最大の魅力といえるでしょう。かつては容量あたりの単価が高いことが普及の壁となっていましたが、その状況は今、劇的に変わりつつあるのです。
2018年半ば頃から、スマートフォンの販売不振などの影響で、SSDの主要パーツである「NAND型フラッシュメモリー」の需要が停滞しました。この1年でNANDの価格は4割近くも値下がりしており、それに引きずられる形でSSDの製品価格も大幅にダウンしています。これまでは高嶺の花だったSSDが、手軽にパソコンへ搭載できる存在になったことは、ユーザーにとって非常に喜ばしい進化といえます。
ノートパソコンやゲーム機向けの2.5インチHDDも、苦境に立たされています。専門のアナリストによれば、特に256GB(ギガバイト)のSSDへの置き換えが顕著に進んでいるとのことです。実際に、国内の家電量販店などのデータを集計した結果、2019年11月の時点で、SSDのみを搭載したパソコンのシェアが54%に達しました。一方でHDDのみの製品は38%にまで落ち込み、ついに勢力が逆転したのです。
2020年はゲーム機もSSD時代へ!変化するストレージの未来
記憶装置の主戦場は、もはやパソコンだけではありません。2020年末にはソニーから待望の次世代ゲーム機「PlayStation 5(PS5)」が発売される予定ですが、ここでも大きな変革が起きます。現行のPS4ではHDDが採用されていましたが、PS5では初めてSSDの搭載が計画されているのです。大容量のゲームデータを一瞬で読み込むことが可能になれば、私たちのゲーム体験はよりストレスフリーなものになるでしょう。
市場調査によれば、2020年にはパソコン全体へのHDD搭載率は2割から3割程度にまで縮小すると予測されています。確かにデータの長期保存や監視カメラの映像記録といった分野では、依然としてHDDの低コストな大容量化が重宝されています。しかし、個人のライフスタイルやスピード感が重視される用途においては、もはやSSDが「標準」となる時代がすぐそこまで来ているように感じられます。
私個人の見解としては、HDDという技術が消え去ることはないと考えています。しかし、かつてレコードがCDへ、ガラケーがスマホへと移り変わったように、技術の進歩は止まりません。データの高速アクセスが当たり前になる未来で、HDDがいかにして「大容量の倉庫」としての地位を確立し続けるのか、あるいはさらなる技術革新を見せるのか。今後の業界の動向から目が離せません。
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