全国各地の約50もの自治体を巻き込み、行政サービスに深刻な影を落としているクラウド障害について、衝撃的な新事実が明らかになりました。NTTデータの子会社である日本電子計算は、2019年12月16日に記者会見を開き、対象となる自治体のうち33団体において、一部データの復旧が極めて困難な状況であると公表したのです。
当初、同社は早期の解決を見込んでいましたが、2019年12月4日の発生から2週間近くが経過してもなお、混迷を極めています。山田英司社長は会見の場で深く頭を下げ、住民や自治体関係者へ多大なる迷惑をかけたことを謝罪しました。この未曾有の事態に対し、SNS上では「行政のデジタル化に対する信頼が揺らぐ」といった不安の声が相次いでいます。
バックアップさえも阻んだ未知のソフトウェア不具合
今回のシステム障害は、クラウドサーバーを制御するソフトウェアの欠陥が引き金となりました。ここで言う「クラウド」とは、インターネットを経由して外部のサーバーやストレージを利用する仕組みを指します。本来、物理的な故障に強いはずのシステムですが、今回はデータを保存する領域そのものが機能不全に陥り、アクセス不能という最悪の事態を招いたのです。
さらに追い打ちをかけたのが、バックアップデータの不備でした。調査の結果、全データのうち15%分が、ソフトウェアの予期せぬ挙動によって正常に複製されていなかったことが2019年12月15日に判明しています。万が一の備えである「バックアップ」が機能していなかった事実は、ITインフラを支える企業として非常に重い責任を問われるべき問題でしょう。
現在、復旧が完了しているのは全体の約70%にとどまっており、残りの15%については今後復旧作業を進める方針です。しかし、バックアップに失敗した15%に関しては、職員のメール履歴や、後期高齢者医療制度に関わる重要な手続き情報、学校の共有ファイルなどが含まれており、行政運営への致命的な打撃が懸念されます。
教育現場にも波及する混乱と過去の教訓
市民生活への具体的な影響も広がっています。例えば東京都練馬区では、区立小中学校98校が利用する教育システムが完全には復旧していません。この事態を受け、2019年12月25日の終業式に予定していた通知表の配布を、異例の事態として2020年1月に延期することを決定しました。子供たちの努力の結晶が、デジタルの闇に消えかねない現状には胸が痛みます。
過去を振り返れば、2012年にも大手レンタルサーバー業者で大規模なデータ消失事件が発生し、5600社もの顧客情報が失われた例がありました。今回の事件は、その再来を予感させるほど深刻です。利便性を追求するあまり、データの安全性という根本的な基礎が疎かになっていたのではないかと、私は強い危機感を抱かずにはいられません。
日本電子計算は、消失した可能性のあるデータについて、他の外部システムに残っていないか個別調査を進めるとしています。自治体との協議は難航が予想されますが、一刻も早い全容解明と、住民の不利益を最小限に抑える誠実な対応が求められます。デジタル社会の脆さが露呈した今、私たちは情報の守り方を根底から見直すべき時期に来ているのでしょう。
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