日本を代表するアパレル大手のワールドが、これまでの常識を覆す大胆な経営戦略を打ち出しました。2019年12月17日、同社は本業の稼ぎを象徴する指標である「連結コア営業利益」において、衣料品以外の分野が占める割合を2022年3月期までに5割まで引き上げる方針を明らかにしています。国際会計基準を採用する同社にとって、このコア営業利益は経営の健全性を示す極めて重要な物差しとなっており、その半分を非アパレルで支えるという決断は、業界に大きな衝撃を与えました。
かつてはブランド商品の販売が収益の柱でしたが、近年の国内ファッション市場は成熟しきっており、単純な物販だけでは持続的な成長が難しい局面を迎えています。そこで同社が成長の起爆剤として白羽の矢を立てたのが、長年の店舗運営で培ったノウハウを他社に提供して手数料を得る「プラットフォーム事業」です。いわば、自社の成功法則をサービスとして外販するこのビジネスモデルは、在庫を抱えるリスクが低い上に、安定した収益が見込める革新的な手法として期待されています。
SNS上では、このワールドの動きに対して「服を売る会社から、仕組みを売る会社への脱皮だ」といった驚きの声や、「アパレル不況の中で生き残るための正解かもしれない」という前向きな意見が数多く投稿されています。一方で、長年のファンからは「ブランドの個性が薄まってしまわないか」といった懸念も見られますが、今のところ市場はこの柔軟な姿勢をポジティブに受け止めているようです。2019年4月から9月までの実績ですでに非アパレル比率は4割弱に達しており、目標達成は射程圏内といえるでしょう。
収益構造の変革がもたらす200億円の未来予想図
具体的な数字に目を向けると、2020年3月期のコア営業利益は前期比11%増の180億円を見込んでおり、非常に力強い成長曲線を描いています。ワールドは中期的な目標として年率8%の成長を掲げており、非衣料分野の育成が順調に進めば、2022年3月期には利益が200億円の大台に乗る計算になります。2018年9月28日に13年ぶりの東証1部再上場を果たして以降、投資家からの視線は厳しさを増していますが、今回の多角化戦略はそれに対する明確な回答となるはずです。
ここで解説しておきたいのが、戦略の鍵を握る「プラットフォーム事業」という専門用語です。これは、ワールドが持つ生産から物流、販売までのITシステムや店舗運営の知見を、ライバル企業を含む外部に開放して利用料を得る仕組みを指します。自社だけで完結せず、業界全体のインフラを担うことで、不況に左右されにくい強固な経営基盤を築くことが狙いです。アパレル業界の枠を超え、一種のコンサルティング企業やITサービス企業のような側面を持ち始めていると言っても過言ではありません。
私自身の見解としては、このワールドの決断は、ファッション業界が生き残るための「究極の進化形」であると感じています。少子高齢化が進む日本において、衣服の消費量が増え続けることは考えにくいため、知識やシステムを資産に変える戦略は非常に合理的です。ただし、プラットフォームとしての価値を維持するためには、常に最先端の販売ノウハウを自社のブランド事業で証明し続けなければなりません。自社ブランドの魅力と、外販するシステムの質のバランスをどう保つかが、今後の成否を分けるでしょう。
コメント