2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、株式市場では不動産セクターへの強気な見方が急速に広がっています。これまで懸念されていた「五輪後の市況冷え込み」というシナリオは、今や過去のものになりつつあるようです。オフィスビルの高稼働が続く現状に加え、実力に対して株価が低すぎる「割安感」が投資家を惹きつけています。
2019年12月23日の市場は、売買代金が1兆5000億円を下回る閑散とした状況でしたが、その中でユニゾホールディングスが5%高を記録し、異彩を放ちました。従業員による買収という異例の発表が追い風となりましたが、好調なのは同社だけではありません。7月末と比較すると、業種別の不動産指数は日経平均の伸びを大きく上回る16%の上昇を見せています。
SNSや個人投資家の間でも「五輪が終われば暴落するという説は、もはや古いのではないか」という声が目立ってきました。東京都心のオフィス賃料は2019年11月まで71カ月連続で上昇しており、2020年に開業予定の大型ビルもすでに入居者が決まっています。こうした実体経済の強さが、投資家心理を「慎重」から「強気」へと劇的に変化させたのでしょう。
REITから不動産株へ資金が移動する理由
2019年前半までは、不動産投資信託である「REIT(リート)」に資金が集中していました。REITとは、多くの投資家から集めた資金で不動産を運用し、得られた賃料収入を配当として還元する仕組みの商品です。世界的な低金利を背景に、債券の代わりとして高い利回りが期待できるREITが好まれていましたが、足元ではその流れに変化が生じています。
日米の長期金利が上昇傾向に転じたことで、利回り面でのREITの魅力が相対的に薄れてきました。その結果、プロの投資家たちは「保有する不動産の価値に対して株価が安すぎる」不動産会社へと資金を移し始めています。現在の不動産株は、会社が持つ土地や建物の時価を反映した実質的な価値に比べ、かなり低い水準で放置されているのが現状です。
専門的な指標である「修正PBR(株価純資産倍率)」で見ると、大手デベロッパーの数値は平均0.6倍前後と、過去最低水準にあります。PBRとは株価が1株あたりの純資産の何倍かを示す指標で、通常は1倍が解散価値(底値)とされます。それが1倍を大きく割り込んでいるということは、市場が不動産会社の実力を極めて過小評価している証拠と言えるでしょう。
世界が注目する「ショーケース効果」と五輪後の期待
五輪後の反動減を心配する声に対し、歴史的なデータは意外な事実を示しています。1990年代以降の五輪開催国を分析すると、開催年から2年程度は不動産価格が底堅く推移する傾向があるのです。これは都市の再開発が進み、街が美しく整備されることで世界中の投資家の目に触れる「ショーケース効果」が働くためだと考えられています。
私個人の見解としては、現在の不動産株の上昇は単なる一時的なブームではなく、日本の都市価値が世界基準で再定義されるプロセスの始まりだと考えています。海外の投資家から見れば、東京の不動産は依然として他の主要都市に比べて魅力的です。五輪というイベントを通じて東京のインフラの質の高さが再認識されれば、さらなる資金流入が期待できます。
長らく「五輪後不況」の影に隠れて、株価上昇の波に乗り遅れていた不動産セクターですが、今まさに「遅れてきた主役」として脚光を浴びています。割安な準大手への買収期待や、海外勢による買い支えを背景に、2020年以降も不動産相場は日本株全体を力強く牽引していく可能性が高いでしょう。投資のチャンスは、祭りの後にも続いているのです。
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