2019年12月11日、地球温暖化を食い止めるための国際的な約束事である「パリ協定」の運用がいよいよ2020年から本格化しようとしています。世界各国が二酸化炭素の排出削減に本腰を入れる中、石炭火力発電に頼る姿勢を崩さない日本への風当たりは、日に日に強まりを見せています。環境意識の高い層が集うSNS上でも、「日本はもっと太陽光や風力に舵を切るべきだ」という厳しい声が目立つようになってきました。
環境目標を達成するために再生可能エネルギー、いわゆる「再生エネ」を限界まで普及させる方針は、もはや避けては通れない道と言えるでしょう。ここで言う再生エネとは、太陽光や風、地熱といった、一度利用しても比較的短期間で自然に補充されるエネルギー源を指します。しかし、理想を掲げる一方で、現在の日本が置かれている客観的な状況を冷静に見極める視点も、同じくらい重要になってくるのではないでしょうか。
欧州や中東との決定的な「地理的条件」の差
欧州諸国では海の上に巨大な風車を設置する「洋上風力発電」が凄まじい勢いで広がっており、中東では広大な砂漠で太陽光発電を行うコストが、従来の火力発電を下回るという逆転現象さえ起きています。こうした華々しい成功例を見ると、つい「なぜ日本にはできないのか」と不満を覚えたくなるものです。しかし、遠浅の海が続く北欧と、急深な海に囲まれた島国である日本では、建設にかかる手間やコストに大きな隔たりが存在します。
さらに、人口密度が高い日本では設置場所の確保が難しく、漁業関係者の方々との緻密な利害調整など、社会的なハードルも無視できないのが現実です。太陽光や風力は、一見するとどこにでもあるように思えますが、実は石油や石炭と同じように、効率よく得られる地域が限られている「偏在(偏って存在すること)」した資源なのです。東南アジアの多くの地域でも日本と同様に風力が適さない場所は多く、これは自然界の摂理と言えます。
「運ぶ」エネルギーがエネルギー安全保障の鍵となる
ただし、国内に適地が少ないからといって、再生エネの導入に後ろ向きになって良いわけではありません。日本が今後取るべき道は、海外の広大な土地で生み出された潤沢な電力を日本へ運ぶ、あるいはその電力で製造した「水素」という形で輸入する仕組みづくりにあると考えられます。水素は燃焼しても二酸化炭素を出さないため、次世代のクリーンなエネルギー媒体として、世界中で熱い視線が注がれている最先端の資源です。
私は、日本がエネルギー自給率の低さを嘆くだけの段階は終わったと感じています。これからは、地理的な弱点を「技術力」と「外交」でカバーする、攻めの姿勢が求められるはずです。たとえエネルギー源が石油から再生エネへとシフトしたとしても、国の存立に関わる「エネルギー安全保障(必要なエネルギーを安定して確保すること)」の重要性は変わりません。新しい時代の到来に向けた、日本の知恵が今まさに試されています。
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