2019年12月25日、聖夜の賑わいの中で日本の科学技術界に大きな希望の光が灯っています。最先端科学の象徴とも言える「量子力学」を軸に、大阪大学がその総力を結集させた新拠点「量子情報・量子生命研究部門」の快進撃が続いています。2018年の設立以来、この部門はベテランから気鋭の若手まで多才な人材を惹きつける磁場となっており、世界をリードする研究拠点としての地位を確固たるものにしつつあります。
部門長を務める北川勝浩教授は、本格的な量子コンピュータが社会に浸透した未来を非常にポジティブに見据えていらっしゃいます。教授が描くビジョンは、単なる計算速度の向上に留まりません。量子力学の神秘を解き明かすことで、エネルギー問題や環境問題の根本的な解決に挑もうとされています。特に「人工光合成」の実現など、これまでは夢物語とされてきた技術が、量子コンピュータの力によって現実のものとなる日が近づいているのです。
量子力学とは、私たちが普段目にする世界とは全く異なるルールで動く「原子」などの極微の世界を解き明かす物理学のことです。ここでは一つの粒子が同時に複数の場所に存在するような不思議な現象が起きています。SNSでは「魔法のような物理学」と例えられることもありますが、実は植物の光合成など、自然界では当たり前のようにこの仕組みが使われています。この仕組みを計算に応用したものが、今世界中で注目を集める量子コンピュータなのです。
2019年10月には、米グーグルが既存のスーパーコンピュータを圧倒する性能を実証したと発表し、世界中に衝撃が走りました。この画期的な論文の審査に携わったのが、2019年4月に京都大学から移籍してきた藤井啓祐教授です。藤井教授は、基礎研究の面白さと実用化の距離が近いこの分野に魅了され、自ら理論と実践の両輪で研究を推進されています。若きリーダーの参入は、阪大の研究体制をより一層強固なものにしました。
藤井教授の凄みは、研究室に閉じこもらない行動力にあります。2018年にはスタートアップ企業「QunaSys(キュナシス)」を創業し、2019年11月にはベンチャーキャピタルから2.8億円もの資金調達を成功させました。民間企業と連携しながら、新薬の開発や複雑な化学反応を解明する触媒の設計など、実社会に役立つソフトウエア開発を加速させています。これは大学の研究がビジネスへと昇華する理想的な循環の形といえるでしょう。
AIと量子の融合がもたらす素材革命
さらに注目すべきは、人工知能(AI)と量子コンピュータを掛け合わせた「機械学習」の応用です。スパコンでも1万年以上かかるとされる膨大な計算を、量子コンピュータなら短時間で処理できる可能性があります。これにより、光り輝く発光体や電気抵抗ゼロの超電導材料といった、量子力学的な性質を持つ新材料の探索が劇的にスピードアップするでしょう。藤井教授は、この技術が製造業のあり方を根本から変えると確信されています。
もちろん、量子技術が明日すぐに私たちの生活を劇的に変えるわけではありません。実用化には10年単位の粘り強い研究開発が必要です。だからこそ、大阪大学は若い研究者が安心して挑戦できる環境を整え、同時に外部資金を呼び込む仕組み作りを急いでいます。基礎工学という伝統ある融合分野に強みを持つ阪大だからこそ、異なる専門性を持つ頭脳が混ざり合い、新しいアイデアが次々と生まれる土壌があるのです。
個人的な視点になりますが、私はこの「異分野融合」こそが日本が世界で勝つための鍵だと考えます。学問の壁を取り払い、さらに大学と企業の垣根も越えていく。北川教授が仰るように、優秀な学生や研究者がこの熱狂の渦に飛び込むことで、私たちの未来はより鮮やかに塗り替えられるはずです。量子という無限の可能性を秘めたフロンティアで、大阪大学がどのような「答え」を導き出すのか、期待に胸が膨らみます。
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