【化学メーカー】DICが大型M&Aで世界展開を加速!インキ世界首位を築いた「多角化戦略」の光と影

化学メーカー大手であるDICが、今後のさらなるグローバル展開と事業の多角化に向け、大型M&A(合併・買収)を検討していることが、2019年6月12日時点の報道で明らかになりました。DICは、印刷インキや顔料などを主力とする老舗企業ですが、その歴史は積極的なM&A戦略によって、常に世界市場での優位性を確立してきた道のりといえるでしょう。この積極的な姿勢こそが、同社をインキ分野における世界首位へと押し上げた最大の要因だと考えられます。

DICのM&Aの歴史を振り返りますと、インキ事業においては、長年の提携関係にあったアメリカのサンケミカル社のインキ・顔料事業を1986年に買収したことが大きな転機となりました。さらに2000年には、フランスの大手石油会社トタルフィナ社の同事業も買収したことで、文字通りインキの世界トップメーカーとしての地位を揺るぎないものにしたのです。これにより、同社の顔料やインキ関連の製品は、世界中の印刷物や塗料に使われることになり、その存在感を一気に高めています。

また、DICはM&Aを単なる事業拡大だけでなく、将来を見据えた事業の多角化、つまり関連性の低い分野にも手を広げる足がかりとして活用している点も注目に値します。その一例が、2012年に買収したオーストリアのベンダルッツ社です。同社が手掛けるのは、自動車の外装などに使われる金属的な光沢を出すアルミニウム顔料という特殊な材料で、高付加価値な分野への進出を可能にしました。さらに2015年には、世界的に需要の拡大が見込まれていた化粧品向けの顔料メーカー、イギリスのキングフィッシャーカラーズ社を傘下に収めており、化粧品という成長市場に事業領域を広げることに成功しています。

このように華々しい成功を収めているDICのM&A戦略ですが、もちろんその道のりが順風満帆だったわけではありません。苦い失敗事例も経験しています。特に知られているのが、1987年に買収したアメリカのライヒホールド・ケミカルズ社です。この合成樹脂事業は、買収後の採算改善が難航し、結果として2005年に売却を余儀なくされました。この事業撤退に伴い、500億円を超える特別損失という大きな代償を支払うこととなってしまったのです。M&Aは、成功すれば事業を一気に成長させる起爆剤となりますが、事前の見通しや買収後の統合作業(PMI:Post Merger Integration)を誤れば、経営に大きな打撃を与える両刃の剣であることを示しています。

今回の大型買収検討の報道を受け、SNS上などでは「さすがDIC、攻めの経営だ」「また世界地図を塗り替えるか」といった期待の声が多く見られる一方で、「ライヒホールドの二の舞にならないか心配」といった慎重な意見も散見されます。成功事例から得たノウハウを活かしつつも、失敗事例から学んだ教訓をどのように生かしてリスクを回避するのか。DICが次にどのような分野で、どのようなM&Aを実現するのか、そしてその判断が同社の未来をどう形作るのか、化学業界全体が固唾を飲んで見守っている状況です。

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