ベンチャーキャピタル(VC)という存在をご存知でしょうか。彼らは、まだ世に知られていない原石のようなスタートアップ企業を見つけ出し、資金を投じて新産業を育成する、いわば現代の「目利き」集団です。日本経済新聞が2019年に新規株式公開(IPO)を果たした企業の投資利益を調査したところ、米DCMベンチャーズが堂々の首位に輝きました。
SNS上では「VCの投資手法によって企業の成長スピードがこれほど変わるのか」と驚きの声が上がっています。特に注目を集めているのが、2019年12月17日に東証マザーズへ上場したクラウド会計ソフトの「フリー」です。この企業は、インターネット経由でソフトウェアを利用する「SaaS(サース)」というモデルの先駆けとして、投資家から絶大な支持を得ています。
「100倍のリターン」を叩き出したDCMの本多氏
DCMベンチャーズの日本代表、本多央輔氏は、フリーがまだマンションの1室で「CFO株式会社」と名乗っていた2012年12月に出資を決めました。当時投じた5800万円は、上場時の公開価格ベースで約60億円、つまり100倍という驚異的な価値へと膨れ上がっています。これこそが、本多氏の掲げる「特大ホームランを狙う」という投資スタイルの真骨頂です。
本多氏は「海外の投資家が求めるのはヒットではなく、誰もが驚くホームランだ」と断言します。世界で40億ドル以上を運用するDCMにとって、小規模な成功は意味をなしません。そのため、特定のテーマに基づき「ユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場企業)」になり得る候補をトップダウンで徹底的に厳選し、集中投資を行うのが彼らの流儀なのです。
投資後も、DCMは企業の「飛距離」を伸ばすために奔走します。例えば、米グーグルから優秀な人材を引き抜くきっかけを作ったり、新たな投資家との縁を繋いだりといった経営支援を惜しみません。単に資金を出すだけでなく、企業の成長に必要なピースを埋めていく姿勢が、今回の305億円という莫大な利益に繋がったのでしょう。
「二人三脚」から「黒子」まで、多様化する支援スタイル
利益額2位のジャフコは、DCMとは対照的に「教師と生徒」のような二人三脚の支援が特徴です。電子チケットのギフティやChatworkに対し、創業期から営業同行や組織づくりの助言を行い、泥臭く成長を支えてきました。起業家の不安に寄り添いながら、一歩ずつ共に階段を上っていくスタイルは、日本のスタートアップ文化に深く根付いています。
また、3位のグローバル・ブレインは「鉄壁のパートナー」として投資先のBASEを支えました。彼らの特徴は、弁護士やデザイナーなどの専門家集団を抱え、起業家が苦手とする経理や法務をバックアップする「ハンズオン」体制です。それでいて過度な干渉はせず、起業家の自由な発想を尊重する「黒子」の役割に徹する点が、今の若手起業家から高く評価されています。
2018年の国内資金調達額は5年前の5倍となる4200億円を超え、2019年も活況が続いています。資金が溢れる今、VCは「お金」以外に何を提供できるかが問われています。スタートアップの実力を正しく見極め、世界に通用するユニコーンへと育て上げる。そんなVCたちの熱き戦いが、これからの日本経済を面白くしてくれるはずです。
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