2019年12月29日、私たちは一つの時代の節目を迎えようとしています。日本経済新聞社が1985年から蓄積してきた膨大な実売データ「日経POS情報」を紐解くと、平成という激動の30年間を駆け抜けたヒット商品たちの真の姿が浮き彫りになってきました。
POSデータとは「Point of Sales」の略称で、レジでの販売情報をリアルタイムで集計した数値のことです。全国約1500店舗から集まるこの客観的な指標において、平成(1989年01月08日から2019年04月30日)を通じて総合1位の栄冠に輝いたのは、日本ハムの「シャウエッセン」でした。
シャウエッセンの凄みは、圧倒的なリピート率にあります。来店客1000人あたりの販売金額では、2位のビール類に1.2倍の差をつけ、同カテゴリーの競合他社には約2.8倍という驚異的な大差を見せつけました。「パリッ」という心地よい食感こそが、消費者の信頼を勝ち取った証と言えるでしょう。
ネット上でも「結局シャウエッセンを選んでしまう」「あの音は唯一無二」といった声が溢れています。しかし、王者の座に甘んじないのがこのブランドの強さです。発売35年目にあたる2019年には、それまで禁じ手としていた「電子レンジ調理」を公式に解禁し、大きな話題を呼びました。
変化するライフスタイルに寄り添う「定番」の進化形
時短を求める現代人のニーズに合わせ、自らのこだわりを柔軟にアップデートする姿勢は、SNS時代における巧みな情報発信としても高く評価されています。伝統を守るだけでなく、常に「今」の空気感を取り入れる柔軟性こそが、ロングセラーを支える秘訣なのだと私は確信しています。
また、ビールテイスト飲料の分野で平成の頂点に立ったのは、サントリービールの「オールフリー」でした。アサヒビールの「ドライゼロ」と激しいデッドヒートを繰り広げましたが、強力なブランド訴求によって、ノンアルコール市場における絶対的な地位を確立することに成功したのです。
一方で、容器の革新によってV字回復を遂げたのが、明治の「おいしい牛乳」です。2016年に内容量を減らした際は一時的にシェアを落としましたが、高齢者や子供でも扱いやすいキャップ付き容器への変更が功を奏し、2018年には売上ナンバーワンの座を奪還するという快挙を成し遂げました。
市場全体が縮小傾向にある中でも、消費者の使い勝手を徹底的に追求すれば道は開けるということを、この事例は教えてくれています。単に「モノ」を売るのではなく、生活の中の「体験」をデザインする視点。これこそが、令和という新しい時代を勝ち抜くための不可欠な戦略となるはずです。
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