大阪府堺市で産声を上げた竹野染工が、伝統工芸の枠を超えた新しい「手拭い」のスタイルを提案し、感度の高い女性たちの間で大きな話題を呼んでいます。2019年12月17日現在、同社が展開するブランド「hirali(ヒラリ)」や「Oo(ワォ)」は、単なる和雑貨の枠に留まりません。代官山や梅田の蔦屋書店といった、トレンドの最先端を行くショップで選ばれるほど、そのデザイン性と機能性が高く評価されているのです。
この人気の秘密は、独自の「ロール捺染(なっせん)」という技術にあります。これは、絵柄を刻んだ金属製のローラーを回転させながら、生地に染料を転写していく染色技法のことです。竹野染工では、あえて70年前の年代物の機械を使いこなし、熟練の職人が3年の歳月をかけて「表と裏で同じ柄なのに色が違う」という魔法のような仕上がりを実現しました。SNSでも「めくれた時の色の対比が美しすぎる」と、そのセンスに絶賛の声が集まっています。
日本古来の「かさねの色目」を現代のライフスタイルへ
商品の配色には、平安時代の貴族が愛した「かさねの色目」という美学が取り入れられています。これは、十二単のように衣服を重ねた際の色合わせで、移ろう四季を表現する日本独自の色彩感覚です。例えば、商品名に「山眠る」や「雪あられ」といった俳句の季語を冠している点も、乙女心をくすぐる心憎い演出と言えるでしょう。伝統的な亀甲柄や桜模様が、現代的なカラーリングによって新鮮な驚きを与えてくれます。
さらに、肌触りの良さも特筆すべき点です。もともと赤ちゃんの布おむつに使われるほどの最高級の和晒(わざらし)を使用しているため、驚くほど柔らかく、使うほどに肌に馴染みます。ストールや日傘、さらには首に巻く肌着として展開されるこれらのアイテムは、美容や健康に敏感な30代から40代の女性にとって、日常を彩る「お守り」のような存在になっているようです。1500円という価格は一般的な手拭いの約3倍ですが、その価値は十分にあると言えるでしょう。
老舗染色工場の逆転劇と未来への展望
1961年に創業した竹野染工ですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。生活の洋風化によりタオルの普及が進み、堺市に多くあった染色工場は次々と廃業に追い込まれました。しかし、寺田尚志社長は「他と同じでは生き残れない」という強い危機感を抱き、受託加工中心だったビジネスモデルから脱却。職人と共に染料の浸透具合をmm単位で調整する試行錯誤を繰り返し、世界に誇れる自社ブランドを築き上げたのです。
編集者の視点から見ても、この「hirali」の成功は、日本のモノづくりが目指すべき理想の形だと感じます。古い機械を大切に使いつつ、発想を転換して「リバーシブルの美」を見出した点は、まさにイノベーションです。現在はオンラインや一部のセレクトショップでの販売が中心ですが、寺田社長は将来的な自社店舗の設立も見据えています。世界へ羽ばたく日本の色彩が、今後どのような景色を見せてくれるのか、期待に胸が膨らみます。
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