毎年のように発生する大雨や台風による浸水被害ですが、ついに私たちの火災保険料の仕組みが大きく変わる転換期を迎えました。中堅損害保険会社の楽天損害保険が、2020年4月1日から国内の損害保険業界で初めてとなる、水害リスクに応じた地域別の保険料制度を導入することを決定したのです。これまで一律だった水害への備えに不満を持っていた方にとっては、非常に注目すべきニュースと言えるでしょう。
この画期的な新制度は、国土交通省が公開している「ハザードマップ」を基準にして運用されます。ハザードマップとは、自然災害による被害が予測されるエリアや、避難場所などの情報をまとめた地図のことです。楽天損保は、このデータを活用して全国の住所を洪水や河川の氾濫リスクに応じて4つの段階に細かく分類し、それぞれの危険度に合わせて保険料を算出する仕組みを構築しました。
具体的な金額に目を向けると、最安の地域と最高の地域では年間で最大10,000円程度の差が生まれる見込みです。例えば、高台などの安全な場所に住む契約者の場合は基準より1割近く安くなります。その一方で、床上浸水の危険性が高い川沿いや埋め立て地といったエリアでは、保険料が3割から4割ほど引き上げられることになりました。この思い切った価格差の導入は、今後の業界のスタンダードになるかもしれません。
今回の発表を受けて、SNSなどインターネット上では大きな反響が巻き起こっています。「安全な場所に住んでいるのに高い保険料を払う不公平感がなくなる」と歓迎する声が目立ちました。その一方で、「生まれ育った土地や予算の都合で移転できないのに、保険料まで高くなるのは生活への負担が大きすぎる」といった、リスクの高い地域に住まざるを得ない人たちからの悲痛な懸念や不安の声も広がっています。
現行の契約者のうち、約7割が最も保険料の安い区分に該当するとされていますが、残りの3割にとっては実質的な値上げです。しかし、筆者はこのリスク細分化という攻めの姿勢を前向きに評価しています。なぜなら、自分の住む地域の危険性を料金という目に見える形で自覚することは、日本全体の防災意識を底上げする強力なきっかけになるからです。単なるコストの増減ではなく、命を守る行動に繋がるはずです。
大手損保も追随か!これからの住まい選びと火災保険の未来
楽天損保のこの先進的な試みは、一社だけの動きにとどまらず、業界全体を巻き込む巨大なうねりとなりそうです。すでに最大手の一角である東京海上日動火災保険も同様の制度導入に向けた検討を始めており、他社も追随する可能性が極めて高いでしょう。これからは「どこの都道府県に住むか」だけでなく、「その土地のピンポイントな水害リスクがどれくらいあるか」が重視される時代へと突入します。
これまで日本の火災保険料は、建物の構造や都道府県ごとの大まかな区分だけで決められており、同じ市区町村であれば川のすぐ横でも山の上でも水害部分の保険料は変わりませんでした。しかし地球温暖化による気象災害の激甚化に伴い、従来の仕組みでは保険会社の支払いリスクが維持できなくなっています。この制度への移行は、時代の変化が生んだ必然の結果だと言えます。
今後の住まい選びにおいて、ハザードマップの確認は絶対に欠かせないプロセスになるでしょう。これからマイホームの購入や賃貸契約を考えている方は、利便性や価格だけでなく、将来的な火災保険料の負担額まで見据えて土地を選ぶ必要があります。2020年4月1日の制度開始を機に、私たち消費者も単に保険を任せきりにするのではなく、賢く選んでリスクをコントロールする知恵が求められています。
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