中国のインターネット業界で、今まさに地殻変動が起きています。ゲーム事業で世界的な知名度を誇る騰訊控股(テンセント)が、金融ビジネスの分野で猛烈な快進撃を続けているのです。年換算で1兆円を優に超える売上高を叩き出し、中核であるスマートフォン決済事業の評価額は約15兆円に達しました。SNS上でも「テンセントの進化が止まらない」「利便性が高すぎて手放せない」といった驚きの声があふれています。
この驚異的な急成長の背景には、実に150行を超える銀行との戦略的な業務提携があります。テンセントはこれまで資金調達が難しかった小規模な個人商店や低所得者層をターゲットに設定しました。提携した銀行に対して、新しい融資プラットフォームの立ち上げを全面的にバックアップするビジネスモデルを展開しています。システム構築費用やクラウドの利用料が、同社の新たな強固な収益源となっているのです。
不良債権を抑え込む驚異のAI与信技術
銀行向けのシステムで最も注目されているのが、人工知能(AI)を活用した「与信」判断技術になります。与信とは、お金を貸し出す相手の「信用力」を評価し、いくらまで融資できるかを決める審査手続きのことです。テンセントは2014年に設立した中国初のネット銀行「微衆銀行(ウィーバンク)」を通じ、この最先端技術を徹底的に磨き上げてきました。膨大なデータをもとに、貸し倒れのリスクを予測する仕組みを構築しています。
同社が誇る11億人以上のSNS利用者が生み出すビッグデータをAIで緻密に分析すれば、個人の行動パターンから融資の可否を瞬時に見極めることが可能です。事実として、微衆銀行における2018年末時点の不良債権比率は、驚異の0.5%という低水準を記録しました。これは中国の商業銀行全体の平均値である1.8%を大きく下回っており、一般の金融機関が喉から手が出るほど欲しがる圧倒的なノウハウと言えるでしょう。
金融大国の中国であっても、データの見誤りが巨額の損失を生む融資事業は、簡単に真似できるものではありません。リスクを最小限に抑える鍵は、毎日の生活に根付いたスマホ決済から得られる高精度なライフデータです。実店舗やネット通販で日常的に使われる決済データには、消費者の購買力やライフスタイルが鏡のように鮮明に映し出されます。これを握る企業こそが、次世代の覇権を握る仕組みです。
圧倒的な決済回数でアリババの牙城に迫る
市場のシェア争いでは、長年のライバルであるアリババ集団が先行しているように映るかもしれません。2019年4月から6月期の決済額シェアは、アリババが53%でテンセントは39%となっています。しかし、実際の決済「回数」に目を向けると、全く異なる景色が見えてくるでしょう。テンセントの1日あたりの取引回数は、なんと12億7800万回を記録し、アリババの2.4倍という驚異的な数値を叩き出しています。
地域に根差した小さな商店や個人のやり取りを、対話アプリを通じて見事に囲い込んだ成果と言えます。アメリカの調査機関による試算では、スマホ決済事業の評価額において、テンセントがアリババを上回る逆転劇も発生しました。インターネットメディアの視点から見ても、単なる決済の枠を超えて「生活のインフラ」として深く浸透したテンセントの戦略は実に見事であり、今後の市場を牽引していくことは間違いありません。
2019年7月から9月期における金融関連の売上高は、日本国内の大手信託銀行グループに匹敵する約3400億円へと急拡大を遂げました。今や会社全体の売上高の23%を占めるまでに成長し、看板事業であるゲーム部門に迫る勢いを見せています。政府の規制強化でゲーム事業が足踏みをし、ネット広告で新興勢力が台頭する今、この金融領域でのサービス多様化が、同社の未来を占う最大の試金石となるでしょう。
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