私たちの日常に欠かせないYouTubeやNetflixといった動画サービスが、大きな転換期を迎えています。現在、世界中で「ネットワークの中立性」を巡る議論が白熱しており、特定のアプリの通信料を無料にする「ゼロレーティング」の是非が問われているのです。ネットの中立性とは、通信事業者がすべてのデータを平等に扱うべきという考え方ですが、この原則が今、大きく揺れ動いています。
アメリカの動向を振り返ると、政治の波に翻弄されてきた歴史が見て取れます。2015年2月26日に、当時の民主党政権下の連邦通信委員会(FCC)は厳しい中立性規則を採択し、特定のコンテンツを優遇することを厳しく制限しました。しかし、2017年1月20日にトランプ政権へと交代して以降、共和党の主導によってこれらの規制の大部分が撤廃されるという劇的な変化が起きたのです。
世界各国で分かれるゼロレーティングへの判断
共和党政権は伝統的に市場競争を重視する姿勢を貫いており、巨大企業の合併やゼロレーティングサービスの提供にも寛容な立場を示しています。これはビジネスの自由度を高める一方で、コンテンツ大手による市場の独占を招くリスクも孕んでいるでしょう。SNS上では「好きな動画が無料で見られるのは嬉しいけれど、小さなサービスが淘汰されるのは困る」といった、利便性と公平性の間で揺れる声が多く見受けられます。
対照的に、インドでは非常に厳しい決断が下されました。2016年2月8日に、特定のアプリの通信量を無料化・割引するサービスを禁止する規定が制定されています。一部のサービスが優遇されることで、新興企業が育たない不公平な市場環境が作られることを懸念した結果です。デジタル格差の拡大を防ごうとするインドの強い意志は、多くの途上国にとっても一つの指針となっているに違いありません。
5Gがもたらす未来と巨大IT企業への懸念
ここで注目したいのが、現行の100倍という圧倒的な通信速度を誇る次世代規格「5G」の商用化です。2019年12月26日現在、この5Gが普及すれば通信網の混雑は大幅に緩和され、技術的には「情報の渋滞」という問題は解決へ向かうと予想されます。しかし、技術的な問題が解決しても、GAFAに代表される海外の巨大IT企業による市場の寡占という課題は依然として残ったままです。
私は、5Gという強力なインフラが整う今こそ、改めて「情報の多様性」を守るための議論が必要だと考えています。特定の巨大資本だけが有利になる仕組みは、インターネットが本来持っていた「自由で開かれた場所」という魅力を損ないかねません。利便性を享受しつつも、透明性の高い通信環境を維持する仕組み作りが、2020年以降のデジタル社会において最も重要なテーマになるはずです。
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