自動車業界が100年に一度の変革期を迎える中、世界のメガサプライヤーであるデンソーが、2020年01月01日付で極めて重要な組織変更と役員人事を発表しました。今回の人事では、単なる担当の入れ替えに留まらず、企業の意思決定を加速させるための「C-Suite(経営最高責任者)」体制の強化が明確に打ち出されています。
SNS上では、特に「デジタル」や「アグリテック」といった非伝統的な領域への注力に対して、「デンソーが本気でソフトウェア企業に進化しようとしている」「農業分野への進出が加速しそうで興味深い」といった、期待に満ちた声が多く寄せられています。まさに、ハードウェア製造の王者が、次世代の知能化社会へ向けてフルスロットルで加速する姿が浮き彫りとなりました。
「C-Suite」の再編が示すデジタル・トランスフォーメーションへの決意
今回の新体制で注目すべきは、CTO(最高技術責任者)に若林宏之氏が就任し、技術とITデジタルの両翼を統括する点です。これまで分断されがちだった物理的な技術開発とデジタル領域を融合させることで、開発のスピードアップを図る狙いが透けて見えます。さらに、都築昇司氏がCISO(最高情報セキュリティ責任者)としてITデジタル本部を牽引する布陣となりました。
ここで注目したい「CISO」という役職は、サイバー攻撃から企業の機密情報や製品の安全を守る責任者のことです。コネクティッドカーの普及により、車がインターネットと常時接続される現代において、セキュリティは人命に直結する最優先課題といえるでしょう。デジタル化を推進する一方で、守りの要を強化するこの采配は、非常に理にかなった戦略的判断だと私は考えます。
また、財務の司令塔であるCFO(最高財務責任者)には松井靖氏が就任し、経営戦略と管理を一手に担います。激動の市場で勝ち残るためには、攻めの投資と守りの財務基盤を高い次元で両立させる必要があります。このように各専門分野の責任を明確化する体制は、グローバル企業としての意思決定をより洗練されたものにするはずです。
アグリテックからMaaSまで、広がる事業領域の最前線
事業部門に目を向けると、伊藤正彦氏が担当する「アグリテック事業推進部」の名称変更が目を引きます。これは農業(Agriculture)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、自動車で培った自動化技術を一次産業に応用する挑戦的な取り組みです。既存の枠組みに捉われないこの姿勢こそが、今の日本企業に最も求められているエネルギーではないでしょうか。
さらに、成迫剛志氏が室長に就任する「デジタルイノベーション室」では、従来のMaaS(マース)開発を一歩進め、新しい移動体験の創出を加速させます。MaaSとは、公共交通機関やカーシェアなど、あらゆる移動手段を一つのサービスとして統合する概念です。部品を作るだけでなく、移動の「仕組み」そのものをデザインしようとする同社の志が感じられます。
今回の2020年01月01日付の人事は、デンソーが伝統的な部品メーカーの殻を脱ぎ捨て、ソフトウェアとハードウェアが高度に融合した「モビリティシステムプロバイダー」へと羽ばたくための、強力な助走期間の始まりです。新しいリーダーたちが、どのような驚きを世界に提供してくれるのか、これからの展開から目が離せません。
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