2020年の東京オリンピック・パラリンピック開幕を控え、首都圏の自治体による外国人観光客の誘致競争が熱を帯びています。このビッグイベントを単なる一過性の祭典で終わらせず、将来にわたる観光拠点としての地位を確立しようと、各都市が独自の知恵を絞っています。ネット上でも「五輪をきっかけに日本の魅力がもっと広まってほしい」「地元の観光地がどう変わるか楽しみ」といった期待の声が寄せられており、注目度の高さがうかがえます。
特に大胆な動きを見せているのが横浜市です。大会期間中、定員2000人を超える豪華客船「サン・プリンセス」を丸ごとホテルとして活用する「ホテルシップ」を展開します。これは宿泊施設の不足を補う画期的な試みです。同市では2019年に超大型船が停泊できる大黒ふ頭客船ターミナルや、商業施設が一体となった新港ふ頭客船ターミナルが相次いで開業しました。7隻の客船が同時に着岸できる能力を生かし、東アジア最高峰のクルーズ拠点を目指しています。
横浜市が狙うのは、単なる通過点ではなく旅の出発地や目的地となる「発着地」としての定着です。乗船の前後に街へ滞在してもらうため、夜間の経済活動を活性化させる「ナイトタイムエコノミー」に力を注いでいます。2019年11月から12月にかけては、臨海部で大規模なイルミネーションイベントを開催しました。言葉の壁を越えて楽しめる光と音の演出に加え、現実の景色にデジタル情報を重ね合わせるAR(拡張現実)技術を導入した点が特徴です。
SNSでは「横浜の夜景がさらに進化して幻想的」「最先端技術を使ったイルミネーションに感動した」と話題になりました。周囲の観光名所や商店街と連携することで、夜間の回遊を促す仕組みも見事です。異国情緒が漂う美しい街並みだけでは目の肥えた訪日客に響かないという危機感を持ち、仕掛け作りに挑む姿勢は素晴らしいと感じます。2019年のラグビーワールドカップに続く2020年の五輪を、街の魅力を底上げする最大の好機と捉えています。
一方、千葉市も独自のブルーオーシャン戦略で勝負を挑んでいます。2019年5月に訪日客プロモーション戦略を策定し、2020年には外国人宿泊者数を100万人に倍増させる野心的な目標を掲げました。多くの自治体が中国や韓国の観光客を奪い合う中、同市が白羽の矢を立てたのはマレーシアです。競合が少ない市場へあえて飛び込み、現地の商談会へ熱心に参加して存在感をアピールしています。他と競合しない視点は非常に戦略的です。
もちろん、開催都市である東京都も負けてはいません。五輪期間中は会場周辺で多言語対応の観光パンフレットを配布し、初めて日本を訪れた人々のリピーター化を狙います。さらに、都が強みとする「MICE」の誘致にも全力です。これは国際会議(Meeting)、企業の報奨旅行(Incentive)、学会等の展示会(Convention・Event)の頭文字をとった言葉で、ビジネス客を呼び込む重要な観光戦略を指します。
都は早くも五輪翌年となる2021年に、世界中の若きリーダーが集う国際会議の誘致に成功しました。欧米ではビジネスでの来日ついでに休暇を取り、周辺を観光することが一般的です。こうした高消費額が期待できる層を呼び込むことで、東京だけでなく周辺地域へも大きな経済効果が波及するでしょう。2019年のラグビー大会時、神奈川県の箱根に試合のない平日の観光客が集まったように、広域的な周遊を促せるかが成否を分けます。
一連の取り組みからは、各自治体が五輪の先にある2021年以降の未来を冷徹に見据えていることが伝わります。単に大会を成功させるだけでなく、地域のインフラや認知度を底上げする契機に昇華させる視点こそが観光立国への鍵です。熱い誘客合戦が日本の観光業をどう進化させるのか、期待が高まります。
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