日本の伝統的な食文化が、いよいよ国の最高峰の栄誉によって認められる時代が到来するかもしれません。文化庁は、これまで伝統芸能や工芸の世界に限定されていた「人間国宝(重要無形文化財保持者)」の指定対象に、和食の料理人や日本酒を醸造する杜氏(とうじ)といった「食の達人」を加える本格的な検討を開始しました。これは、単に職人の功績を称えるだけでなく、日本食のブランド価値を世界に向けて強力にアピールするための国家的なプロジェクトです。政府は、この施策によって訪日外国人観光客を誘致し、日本の素晴らしい食材の輸出をさらに拡大させたいという大きな狙いを持っています。
今回の発表を受けて、インターネット上のSNSでは早くも大きな盛り上がりを見せています。「お気に入りの名店の料理人が選ばれたら嬉しい」「職人の地位向上が期待できる」といった前向きな応援のコメントが数多く寄せられました。一方で、「味の好みは主観的なものなのに、どのように優劣をつけるのか」「選考基準が不透明になりそう」といった、審査の難しさを懸念する冷静な意見も飛び交っています。このように、一般の生活に密着した「食」というテーマだからこそ、多くの人々が自分事としてこのニュースを捉え、熱い議論を展開しているのが非常に印象的です。
ここで注目したい専門用語が「人間国宝」です。これは日本の法律に基づき、歴史上または芸術上において価値が高い「重要無形文化財」の高度な技を体現できる個人を国が認定する制度を指します。無形文化財とは、演劇や音楽、工芸技術など、形としては残らないものの、人間の高度な技そのものに宿る文化的資産のことです。これまでは歌舞伎役者や陶芸家などがその対象の中心でした。しかし今回、日々の食事を支える和食の技術や、緻密な微生物の働きをコントロールする日本酒作りの技術が、それらの伝統芸術と同等の価値を持つものとして国に認められようとしています。
私はこの文化庁の試みについて、日本の素晴らしい伝統を未来へ守り伝えるために極めて価値のある一歩だと考えています。現在、後継者不足や安価なファストフードの普及により、手間暇をかける本物の郷土料理や伝統技術が各地で消滅の危機に瀕しているからです。国が公式にその価値を認めることで、若者が料理人や杜氏を目指す強力な動機付けになるでしょう。ただし、SNSでの指摘通り、評価の公平性を保つことは容易ではありません。単に格式の高い高級店だけでなく、地域に根差した唯一無二の伝統技法を持つ地方の職人にも、しっかりと光が当たるような柔軟な基準作りを期待します。
文化庁は具体的な実態調査をスタートさせるため、2020年04月に食文化を専門に扱う新しい部署を立ち上げる予定です。この新部署が中心となり、まずは人間国宝の候補となり得る職人の発掘や、各地の伝統的な郷土料理を国の無形文化財へ指定するための準備を進めていきます。ただし、食の世界は非常に幅広く奥が深いため、明確な認定基準を確立するまでには数年単位の時間がかかると見込まれています。日本の食文化が世界の至宝として認められるその日まで、どのような職人たちが選ばれていくのか、私たちはその議論の行方を温かく見守っていく必要があるでしょう。
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