世界経済の荒波の中でも、未来を見据える企業の足取りは力強いものです。電子部品大手のTDKを率いる石黒成直社長は、2020年の年頭にあたり、これからの市場を牽引する成長戦略を熱く語りました。2019年は米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題といった世界的な政情不安が影を落とし、底堅かった自動車向け部品の販売台数も頭打ちになるなど、業界全体に不透明感が漂った時期と言えます。しかし、トップの視界は非常にクリアで、悲観的な予測を全く寄せていません。
インターネット上でも「世界情勢に左右されない骨太な戦略に期待したい」「5Gやリチウムイオン電池の需要はこれからが本番」といった、同社の前向きな姿勢を支持する好意的な声が多く見られます。新しい国際秩序の中だからこそ、従来の枠組みに捉われない革新的なビジネスチャンスが誕生するのでしょう。特に次世代の高速通信規格である「5G」の普及に向けたインフラ整備は着実に進んでおり、これが電子部品業界の新たな追い風になることは間違いありません。
石黒社長が今後の成長の柱として見据えるのが、デジタル化の加速に伴って需要が爆発的に高まる受動部品やセンサー、そして電池の分野です。これらに対して、年間で1000億円台後半にのぼる巨額の設備投資を計画しています。受動部品とは、電気を蓄えたりフィルターのように特定の周波数を通したりする、電子回路に欠かせない基礎的な部品のことです。こうしたハードウェアの強化はもちろん、今後はソフトウェア領域への投資も貪欲に進める構えを見せています。
インド市場の開拓と家庭用蓄電池への挑戦
電池事業においては、スマートフォンやワイヤレスイヤホンに広く採用されている小型リチウムイオン電池の生産能力をさらに引き上げる方針です。具体的には、巨大な人口を抱え急成長を遂げるインド市場の本格的な取り込みが始まっています。2019年から現地での電池パック生産を軌道に乗せており、ドイツの子会社が現地に保有していた拠点を集約してスマホ向け電池の生産スペースを確保しました。高い関税を回避するための現地生産という選択は極めて合理的です。
さらに同社は、ドローン用などの高出力電池や、クリーンエネルギーの普及で注目される家庭用蓄電池の分野へも深く参入していく決意を固めています。激しい価格競争が予想される蓄電池市場ですが、水面下で開発を重ねてきた結果、安全性とエネルギー効率に優れた製品が完成したといいます。単に低価格を売り隔てるのではなく、システムメーカーと強固なタッグを組み、電池本来の付加価値を訴求して市場での信頼を確実に勝ち取っていく戦略です。
これにはSNSでも「TDKの信頼性があれば、家庭用蓄電池の選択肢として非常に魅力的」「安全性の高い国産技術に期待が集まるのは当然」と、一般消費者の関心も高まっています。また、2020年前半には次世代の革新的な技術として期待される「全固体電池」の量産も開始される予定です。これは従来の液体電解質を固体の素材に変えることで、液漏れの心配がなく、高出力かつ長寿命を実現できる夢の技術であり、同社の技術力の高さを証明しています。
センサー事業の黒字化とグローバル人材の育成
もう一つの成長の鍵を握るのが、あらゆるモノをネットに繋ぐIoT時代に不可欠なセンサー事業です。自動車市場の低迷で一時的に落ち込んだものの、中国や韓国のスマートフォンメーカーでの採用が少しずつ拡大しており、底堅い成長期に入ったと確信されています。2017年に買収したアメリカのインベンセンス社を中心に続けてきた先行投資が実を結び、2020年度には念頭に置いていた営業赤字からの脱却、つまり悲願の黒字化が目前に迫っています。
編集部の視点として、TDKのこれからの真価は、これまで重ねてきた企業の合併・買収によって獲得した世界中の「人財」をいかに活かせるかにかかっていると考えます。香港の電池メーカーやアメリカのセンサーメーカーを傘下に収め、急激にグローバル化が進んだ同社にとって、多様な文化を持つ従業員の融和は最大の課題です。石黒社長が指摘するように、世界共通の人事制度を整えて国境を越えた社内改革を進めることが、長期的な持続可能性を担保するでしょう。
変化の激しい時代において、過去の成功体験に縛られずに果敢な攻めの姿勢を崩さない同社の戦略は、日本の製造業が目指すべき一つの道標を示しているように感じられます。優れた技術力と、それを支える多様なグローバル人材が有機的に結びついたとき、TDKは単なる電子部品メーカーの枠を超えた世界的なテック企業へと進化を遂げるはずです。2020年1月6日に発信されたこの力強いメッセージの通り、新市場での躍進が非常に楽しみです。
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