【米ロの天然ガス戦争】欧州向け新パイプラインにアメリカが制裁発動!激化するエネルギー覇権争いの行方とガスプロムの誤算

ロシアが社運を懸けて進める欧州向けの新型天然ガスパイプライン事業を巡り、アメリカとの間で激しい主導権争いが勃発しています。ロシアの政府系エネルギー企業であるガスプロム社が主導する、ドイツへと繋がる海底パイプライン「ノルドストリーム2」に対して、アメリカ政府が制裁措置を下したのです。これにより、当初は2020年半ばに予定されていた運行開始の時期が大幅に遅れる懸念が強まっています。ネット上でも「ついにアメリカが強硬手段に出た」「ヨーロッパの冬のエネルギー事情はどうなるのか」と、今後の展開を不安視する声が次々と上がっています。

この壮大なプロジェクトである「ノルドストリーム2」は、ロシアの北西部からバルト海の海底を経由してドイツ北部へと至る、全長およそ1200キロメートルにおよぶ巨大な輸送網です。すでに全体の約9割にあたる部分の設置が完了していましたが、2019年12月にアメリカが事業に関わる企業への制裁を電撃的に決定しました。この影響で、パイプの敷設作業を担当していたスイスの専門企業であるオールシーズ社が即座に作業の中止を表明する事態に追い込まれ、現場には大きな衝撃が走っています。

今回問題となっているパイプラインは、年間で550億立方メートルという、ロシアからヨーロッパへ輸出されるガス全体の約4分の1を担う巨大な輸送能力を誇ります。総事業費は95億ユーロ、日本円にして約1兆2000億円という天文学的な数字であり、フランスやドイツなどの主要なエネルギー関連企業5社も巨額の資金を投じてきました。アメリカ政府は、この新しい輸送網が完成すればヨーロッパ諸国がロシアのエネルギーに依存せざるを得なくなり、安全保障上の重大な脅威になると激しく反発しています。

さらにアメリカには、自国で生産が急増している「LNG(液化天然ガス)」をヨーロッパへ大量に売り込みたいという本音も見え隠れします。LNGとは、天然ガスをマイナス162度まで冷却して液体にしたもので、気体の状態よりも体積が600分の1になるため、専用のタンカーで大量に海上輸送できるのが特徴です。こうしたアメリカの動きに対し、ロシアの外務省は「自国の高い資源をヨーロッパに無理やり買わせようとする経済的強要だ」と激しい言葉で批判を展開しており、両国の溝は深まるばかりです。

一方でロシア側も、ただ手をこまねいているわけではありません。2020年1月8日には、トルコを経由して南ヨーロッパへガスを届ける「トルコストリーム」の供給を予定通り開始しました。さらに、世界最大の市場である中国向けにも、2019年12月に「シベリアの力」と呼ばれる初の大型パイプラインを稼働させています。これらはアメリカによる妨害に対抗するための多角化戦略と言えますが、依然として主要市場であるヨーロッパでの足元が揺らいでいる事実は否定できません。

エネルギー資源を外交の武器として使ってきたロシアにとって、今回の制裁は極めて痛手となるでしょう。現在のヨーロッパ市場では、カタールやアメリカからの供給増により天然ガスの価格が過去15年間で最低水準まで下落しており、巨額の投資を回収できる見込みは不透明です。市場を独占してきたガスプロム社の価格交渉力は確実に低下しており、このままでは採算割れを起こすリスクさえあります。超大国同士のエネルギー覇権をかけたこの勝負は、世界経済の勢力図を塗り替える分水嶺となるに違いありません。

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