過度な飾り付けを削ぎ落とした、シンプルで心地よい暮らしに注目が集まっています。オフィス機器大手のリコーの若手クリエイターたちと、ものづくりの街として名高い東京都大田区の町工場が手を組み、素敵なプロジェクトを展開しています。
その名も「GOOD ENOUGH(グッド・イナフ)」です。「これで十分」という飾らない美しさを追求したこの取り組みは、SNSでも「日本の職人技と若い感性の融合が素晴らしすぎる」「金属の重厚感とミニマリズムが最高」と、早くも大きな反響を呼んでいます。
本プロジェクトの主役は、金属に細かな溝を刻む「切削(せっさく)」や、表面を滑らかにする「研磨(けんま)」といった、下町の職人が長年磨き上げてきた部品加工の技術です。若き感性が描いた理想のデザインに、熟練の技術が命を吹き込みました。
例えば、最小サイズがわずか直径4ミリという真ちゅう製のマトリョーシカや、ずっしりとした金属の重みが心地よいリバーシなど、素材の魅力を前面に押し出した美しい生活雑貨が、2020年01月15日時点で次々と誕生しています。
大田区には、複数の工場がバトンを繋ぐようにして一つの製品を完成させる「仲間回し」という美しい協力文化が存在します。2019年秋に始まったこの取り組みは、まさにその地域密着の絆があったからこそ形になったと言えるでしょう。
リコーのデザイナーである河俊光さんが、職人と直接関わりたいと熱望したことから物語は始まります。2017年秋に大田区産業振興協会を通じて矢沢製作所の矢沢洋平さんと出会い、同世代の2人はすぐに意気投合しました。
総勢15人の若手デザイナーが参加したこのプロジェクトでは、現代の過剰な演出に対する違和感が出発点となっています。誰もが見落としがちな素朴な良さを見つめ直し、作り手と使い手の双方が納得できる絶妙なあんばいを目指しました。
2019年09月中旬には、東京の「グッドデザイン丸の内」で24もの作品がお披露目され、来場者を魅了しました。削りっぱなしの金属の質感をそのまま活かしたモダンな箸置きなど、どれも新鮮な驚きに満ちています。
ほかにも、衣服が滑り落ちないように液体樹脂に浸してコーティングする「ディップ成形」を用いたハンガーや、デスクを彩る上品なティッシュケースなど、日常の不満を解決するアイデアが見事に形となっています。
こうした企業と伝統技術のコラボレーションは、単なる商品開発に留まらず、若手の育成や地域産業の活性化にも繋がる極めて意義深い挑戦です。大量生産の時代だからこそ、こうした温もりのある雑貨が心に響くのではないでしょうか。
職人のプライドと若者の自由な発想が織りなす「ちょうどいい美しさ」は、これからの私たちの暮らしに豊かな彩りを添えてくれるに違いありません。この素敵な雑貨たちが広く愛される日を、本当に楽しみにしています。
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