ビジネスパーソンにとって、配属された部署が自分の未来を大きく変えることがあります。日本証券業協会の会長を務める鈴木茂晴氏は、秘書という一見畑違いの仕事に就いた当初は戸惑いを隠せなかったそうです。しかし、勤務開始から1年が経過する2020年01月16日現在では、この仕事こそが自らの「天職」ではないかと感じ始めています。日々の業務から得られる学びが、彼を経営の核心へと近づけているのでしょう。
当時の社長である千野氏からの「調べ物」という名の千本ノックに対し、鈴木氏は当初、距離の近い課長クラスからデータを集めていました。しかし、そのデータ元を知った千野氏から「なぜ担当役員に直接聞かないのか」と激しい叱責を受けます。トップが外部で発言する資料だからこそ、情報の正確性と責任の重さが違うのです。この気づきをきっかけに、彼は常務や専務といった経営陣へ直接足を運ぶようになります。
本社の役員たちと日常的に接する中で、鈴木氏は会社が目指す方向性を大局的に捉えられるようになっていきます。さらに、社長や会長が誰を頻繁に呼び出しているかを観察することで、次期役員人事の動向まで先読みできるようになったと言います。SNS上でも「経営トップの動きから組織の未来を読む観察眼は、現代のビジネスでも必須のスキルだ」と、彼の洞察力に対する称賛の声が上がっています。
組織を蝕む「好き嫌い人事」の弊害
秘書室には、前社長の退任を巡るトラブルの緊張感が未だ漂っています。こうした本社の中枢で最高幹部たちの動向を見つめ続けた鈴木氏は、人事における重要な真理にたどり着きました。それは、リーダーは決して「好き嫌い」で部下を評価してはならないという決意です。人間である以上、感情の浮き沈みや相性は存在します。しかし、有能な人材には私情を挟まずに仕事を任せるべきなのです。
もし感情に流されて優秀な人材を遠ざければ、企業にとって大きな損失を招きかねません。苦手な相手とは業務外での付き合いを避ければ済む話であり、仕事の評価はどこまでも客観的であるべきだという主張には、私も強く共感します。組織の成長を最優先に考えるならば、リーダーは私情を完全に切り離す覚悟を持つ必要があります。この秘書時代の誓いが、彼のマネジメントの原点と言えるでしょう。
また、鈴木氏は部下への接し方についても深い教訓を得ています。かつて出会った「人の心を傷つける天才」のような上司に叱責された際は、自分の存在価値を見失い、労働意欲を削がれた経験があります。一方で、ミスをした際に「君ほどの優秀な人物がなぜ」と声をかけられると、自省の念と共に次への強いモチベーションが湧いたそうです。言葉選びひとつで部下のパフォーマンスは劇的に変わります。
理想のリーダー像と次なる挑戦
部下から慕われる「理想の上司」とは、一体どのような人物なのでしょうか。鈴木氏の答えは明確で、何よりも「決断力」があるリーダーこそが優れていると断言します。どれほど厳しい人物であっても、責任を持って物事を決めてくれる上司の下であれば、部下は安心して迷わずに動けます。逆に、優しくて人柄が良くても、肝心な場面で決断を下せない上司には、誰も付いていきたいとは思わないでしょう。
後に資金調達の責任者となった際も、彼は自分の役割を「決めること」だと定めて職務を全うしています。多くのビジネスパーソンがSNSで「決断力のない上司の下で働くほど辛いことはない」と呟いていることからも、この視点は時代を問わない真理です。濃密な3年間の秘書生活を終える鈴木氏には、かつて年齢制限で苦杯をなめた念願の米国留学という最高の次のステップが待っています。
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