今、日本の美しい「地方」が海外の旅行者から熱視線を浴びています。瀬戸内エリアへ訪日外国人を呼び込むため、海外メディアへのPR活動を精力的に行う企業がチャプターホワイトです。同社を率いるホワイト美佳氏は、地域ブランドの育成や観光地経営を専門に行う組織「せとうちDMO」と海外の架け橋となる、いわば「黒子」として奔走しています。欧米4カ国からメディアや旅行会社を招いたツアーなどのプロモーションが、見事に実を結び始めているようです。
ツアーのハイライトとして直島や豊島を訪れ、瀬戸内海が織りなす島々の美しい景色を目にした参加者たちは、一様に深い感銘を受けるといいます。その多島美は訪れた人々の心を清らかに洗い流すかのようで、誰もが胸を躍らせながら帰路に就くそうです。こうした確かな手応えを背景に、2019年度からは香川県単独でのプロモーション事業も受託し、その活動の幅をさらに広げています。SNS上でも「瀬戸内の景色は本当に癒やされる」「海外の友人に勧めたい」といった好意的な声が上がっています。
ホワイト氏は以前、米国政府観光局で日本人にアメリカの地方の魅力を伝える仕事に携わっていました。その当時の経験が現在の活動に大きく生かされていると彼女は語ります。何よりも大切にしているのは、旅人が求めるニーズと、旅行地が提供するコンテンツを的確に合致させることです。しかし、日本側が良かれと思って発信している内容と、欧米人が真に求めている体験の間には、未だに小さくないズレが存在しているのが実情のようです。
例えば、香川県三豊市の父母ケ浜やしまなみ海道を訪れた外国人は、決まって「海に入りたい」と口にするそうです。どれほど素晴らしい観光資源が現地にあったとしても、ターゲットである海外の需要を正しく理解していなければ、メディアに紹介されることも、旅先として選ばれることもありません。特に編集の独立性を重んじる海外の報道機関に対しては、相手が求める最適な形で上質な情報を届ける姿勢が不可欠になるでしょう。
2020年には瀬戸内エリアにおける外国人延べ宿泊者数を600万人にするという大きな目標を掲げています。この達成に向けては、メディアへの情報掲載と、現地の旅行会社に対するマーケティングを両輪として進めることが鍵となります。新規の旅行会社をツアーに招待して認知の裾野を広げつつ、過去に記事を載せてくれたメディアにも、地域のイベントと連動した新たな発信を継続的に働きかける計画です。ネットの記事は瞬く間に消費されてしまうからこそ、絶え間ないアプローチが求められます。
そんな中、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズが発表した「2019年に行くべき52カ所」において、瀬戸内が見事に7位に選出されるという快挙を成し遂げました。ホワイト氏は発表当日の深夜にこの掲載を偶然目撃し、現地の担当者と抱き合わんばかりに喜びを分かち合ったそうです。自分たちが信じて歩んできた道は間違っていなかったと確信した瞬間であり、ラッキーセブンという順位も相まって、チームの士気は最高潮に達しています。
岐阜県で生まれ育ったホワイト氏は、周囲と異なる自身のルーツに窮屈さを感じ、高校と大学の時期に渡米を決意しました。しかし、飛び込んだアメリカの地方都市で彼女を待っていたのは、現地の海外旅行者が抱く「日本=東京・京都」という極端に偏った認知の現実でした。田舎育ちの自身にとってその状況は衝撃的であり、この原体験が「旅を通じて日本に貢献する」という人生の大きなテーマへとつながっていきます。
単に海外と日本をつなぐだけでなく、実際に足を運んでもらうところまでが自身の使命であると彼女は力を込めます。日本の地方はどこも魅力的ですが、人口減少や高齢化という深刻な課題に直面しているのが現実です。だからこそ、観光などで地域を訪れる「交流人口」をいかに増やすかが、地方創生の決定打になるはずです。地方のファンを増やす地道な取り組みこそが、これからの日本を救うと私は強く信じています。
欧米の国々から見れば、日本はまだまだ心理的にも物理的にも遠い国であり、訪日旅行は一生に一度の決断となる場合も少なくありません。だからこそ、旅先で地域の人々と温かく触れ合い、日本の田舎に対する心の距離を縮めてもらうことが重要になります。人との出会いや交流こそが旅の真髄であり、地域の未来を明るく照らす光になるのではないでしょうか。
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