長年培ってきたビジネスの経験や知識を携え、人生の第2ステージとして「大学」という新天地を選ぶビジネスパーソンが今、急増しています。少子化の影響で大学間の生き残り競争が激化する中、高等教育機関もこれまでにない経営ノウハウや外部の視点を切実に求め始めているのです。これまで教授職がメインだった企業から大学への人材流動は、今や経営層や事務組織の要職へとその裾野を広げており、日本でも本格的な「人材大移動時代」の幕開けを迎えています。
この異色の転身劇に対し、SNS上でも「これまでの閉鎖的な大学組織に民間のスピード感や財務感覚が入るのは大賛成」「定年後の社会貢献として最高の形だし、若者にとっても生きたビジネスを学ぶ絶好の機会になる」といった、期待に満ちた前向きな声が数多く寄せられています。単なる「老後の仕事」ではなく、自らの手で未来の有為な人材を育てるという崇高なやりがいに、多くの現役ビジネスパーソンも熱い視線を注いでいるようです。
敏腕経営者が大学理事長へ!トップがもたらす経営改革のリアル
野村証券の副会長を務めた柳谷孝さんは、OBからの「母校に恩返しを」という言葉をきっかけに、2016年に明治大学の理事長に就任しました。経済界の強力な人脈を活かし、同大は2021年の創立140周年に向け、和泉キャンパスに新たな教育棟を建設するビッグプロジェクトを推進しています。お金だけではない人生の価値を見出した柳谷さんは、民間企業で培った経営の手腕をもって、アジアのトップ大学を目指す組織の舵取りに深く貢献しているのです。
また、アサヒ飲料の社長を退任後に東京理科大の理事長となった本山和夫さんも、2015年の就任以来、大学の財務健全化に全力を注いできました。大学全体の財政状態を表す「バランスシート(貸借対照表)」や、一定期間の収益と費用をまとめた「損益計算書」を徹底分析し、隠れた経営課題をあぶり出したのです。本山さんは、これらを読み解く力が企業出身者には不可欠であると語り、教育と研究の質をさらに高めるためのスタート台を強固に築き上げました。
広報や就職支援の現場でも活躍!組織を支える多彩なプロのノウハウ
経営トップだけでなく、現場のプロフェッショナルも大学を大きく変えています。元雑誌記者の深尾典男さんは49歳だった2010年に長崎大学の広報セクション立ち上げに参画し、現在は最新鋭のウイルス研究施設で地域社会との対話推進という重要な任務を担っているのです。「人と人とのつながりをどう構築するか」という記者時代のスキルを遺憾なく発揮しており、自身の強みが大学でどう活かせるかを熟考することの大切さを、後進へアドバイスしています。
さらに、公立学校の校長を歴任した戸塚吉彦さんは、法政大学の教職課程センターで相談指導員として活躍しています。週4日の勤務で、教員を志す文系の学生たちに向けて論文や面接の熱心な指導を行っており、その管理職経験が存分に活かされているそうです。定年後にのんびり過ごすのではなく、若者と深く関わる仕事を選んだ戸塚さんの姿は、セカンドキャリアにおける理想的な自己実現のロールモデルと言えるのではないでしょうか。
編集部の視点:大学の「企業化」ではなく「社会との融合」が生む未来
私自身の視点として、この「企業人から大学人へのシフト」は、単なるコストカットや効率化を目的とした大学の「企業化」であってはならないと考えます。真の価値は、長年社会の荒波に揉まれてきたビジネスパーソンが、大学という象徴的な場に「生きた社会の風」を送り込むことにあります。学問の自由や純粋な研究環境を守りつつも、民間のガバナンスや時代を生き抜くマーケティング感覚を融合させることで、初めて大学は真の競争力を得られるのです。
元日本アイ・ビー・エム会長で国際基督教大学(ICU)の理事長を2010年から2019年まで務めた北城恪太郎さんも、財務の収支均衡を達成しながら、外部の人間が社会の変化を大学に伝える重要性を訴えていました。少子化が加速するこれからの日本において、引退した優秀な経営者やビジネスのプロが教育界に身を投じる流れは、社会全体の財産を次世代へ引き継ぐ最良のシステムであり、今後さらに加速していくべき素晴らしい潮流であると確信しています。
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