シンプルで洗練されたデザインが多くの人々に愛されている「無印良品」ですが、その運営会社である良品計画が、2020年に入り大きな試練に直面しています。インターネット通販(ECサイト)におけるシステムトラブルの発生に加え、2020年2月期の通期連結業績予想を再び下方修正したことが発表され、市場には動揺が広がっている状況です。これまで同社の成長を支えてきた強固なブランド力や経営の安定性に疑問符が投げかけられており、投資家たちも今後の動向を慎重に見極めようとしています。
SNS上でもこのニュースは大きな話題となっており、「無印のネットストアがずっと使えなくて不便だった」「最近の無印は昔に比べて少し値段が高く感じる」といった、利便性の低下や商品力に対するリアルなユーザーの声が散見されます。一方で、「トラブルに負けずに頑張ってほしい」「やっぱり無印のデザインが好きだから応援している」という熱心なファンからのエールも多く、ブランドに対する愛着の深さが窺えるのも事実です。しかし、今回のECサイトのシステム停止が長引いたことは、顧客の利便性を損なう結果となりました。
もともとネット通販は、基幹システムと呼ばれる企業の根幹を支える情報システムの更新のため、年末年始の短期間だけ停止する予定でした。ところが、実際の再開は2020年01月18日まで大幅にずれ込む事態となったのです。実店舗を含めた全体の売り上げに対する直接的なダメージは限定的とみられますが、小売業の基本であるバックオフィス(後方支援業務)の運用体制に対して、市場関係者からは厳しい目が向けられ始めています。
「会社側の発信する見通しは、もう信頼しきれない」。ある国内証券のアナリストがそう吐露するように、市場の失望感は根深いものがあります。良品計画が2020年01月10日の取引終了後に公表した内容によると、2020年2月期の純利益は前期比で26%減となる251億円に留まる見通しとのことです。これは従来の計画を約40億円も下回る数値であり、今期に入ってから数えると実に2回目の下方修正という異例の事態を迎えています。
それまでの良品計画の株価は、比較的堅調な値動きを見せていました。2019年10月に実施された消費増税以降、多くの小売企業が売り上げの維持に苦戦する中で、無印良品の国内直営既存店は前年を上回る好調な実績を維持していたためです。それだけに、期待が高まっていた矢先の後ろ向きな発表は市場に冷や水を浴びせる形となり、翌営業日の株式市場では売り注文が殺到して制限値幅の下限(ストップ安)まで株価が急落する事態を招きました。
決算記者会見の席で松崎暁社長は、国際的な情勢不安の影響によって韓国や香港での販売が大きく落ち込んだことや、中国市場において主要な生活雑貨の伸びが鈍化したことを理由として強調しました。これまでの同社の急成長を牽引してきたのは、中国を中心とする東アジア地域でしたが、2019年03月から2019年11月までの期間における同地域の営業利益は前年同期比で13%減少しており、海外戦略のブレーキが鮮明になっています。
しかし、投資家たちが最も懸念している要因は、外部の情勢不安よりも、社内に積み上がってしまった膨大な在庫の山です。2019年11月末時点における棚卸し資産、いわゆる社内にある在庫の総額は1105億円に達し、前年の同じ時期と比べて27%も急増しています。企業の在庫管理の効率性の高さを表す指標である棚卸し資産回転率(在庫が一定期間に何回売れて入れ替わったかを示す数値)も、前年の5.0回から4.4回へと低下を余儀なくされました。
増えすぎた在庫を処分するために実施した値引き販売が、結果として同社の利益を大きく圧迫し、今回の業績下方修正へとつながった格好です。この過剰な在庫の解消は一朝一夕には進まず、影響は来期以降もしばらく尾を引く可能性が極めて高いでしょう。専門家のリポートでも、業績の本格的な回復ストーリーは先延ばしになったとの見方が強く、市場全体に根強い失望感が漂っています。
ただ、既存店の売り上げ自体は決して壊滅的な状態ではなく、2019年03月から2019年11月期における総売上高(営業収益)は3282億円と、前年同期比で8%のプラスを記録しています。決してお客さんが離れてモノが売れなくなったわけではないにもかかわらず、なぜこれほどまでに在庫が膨れ上がってしまったのでしょうか。この矛盾こそが、現在の良品計画が抱える最大のボトルネックを浮き彫りにしています。
多くの市場関係者は、同社の需要予測(将来どれだけの製品が売れるかをデータから予測すること)の精度が甘くなっているのではないか、という疑念を強めています。かつての良品計画は、受発注管理の正確さにおいて業界内でもトップクラスの定評があり、業績予想の上方修正はあっても、下方修正を行うことは極めて稀な優良企業でした。それが前期に続き、今期も2度の修正を余儀なくされている現状は、管理体制の揺らぎを感じさせます。
私個人の視点として、無印良品が直面している真の課題は、競合他社の猛追によるブランドの「相対的な地盤沈下」にあると考えます。かつては独自のポジションを築いていた家具や生活雑貨の分野ですが、現在ではニトリなどの競合が、優れたデザイン性と高い機能性を圧倒的な低価格で提供する時代になりました。無印良品という名前に盲目的に惹かれるファンだけに甘んじることなく、独自の美学と実用性を両立した「商品力」をいま一度磨き直さなければ、かつての高成長路線へ復帰することは容易ではないでしょう。
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