【大阪・心斎橋を変革】大丸新装を起爆剤に「脱・物販」へ!滞在型アートイベントで街の魅力はどこまで高まる?

大阪を代表する繁華街、心斎橋(しんさいばし)の街並みが大きく変わろうとしています。その中心となるのが、2019年9月に新装開業を控える大丸心斎橋店本館です。単なる「買い物をする場所」から「滞在して楽しむ場所」へと街のコンセプトを転換するため、大丸は地域を巻き込んだ壮大なアートイベントの計画を進めています。背景には、ネット通販の普及やインバウンド(訪日外国人観光客)需要の先細りを見据え、物販のみに頼らない持続的な発展を目指すという、百貨店の強い危機感と決意が感じられます。

心斎橋は、オフィス街である梅田とは対照的に、古くから大阪の商業の中心地として栄えてきました。大丸心斎橋店も、1726年に呉服店の松屋として開業して以来、長きにわたりこの地域のシンボルであり続けています。今回の86年ぶりという大規模改装では、その歴史と伝統を土台にしつつ、従来の物販中心のイメージを大胆に刷新する計画です。具体的には、人気キャラクター「ポケットモンスター」のグッズ販売店にカフェを併設したり、フードホールやテラスを設けたりするなど、訪れた人々がゆったりと楽しんで過ごせる空間づくりに特に力を入れているのが特徴です。日本人客はもちろん、訪日客の双方を惹きつける狙いがあると言えるでしょう。

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世界最大級のアートイベントを手本に!滞在型・地域連携の挑戦

この「脱・物販」の姿勢を最も象徴するのが、2019年10月にも開催される大型企画「OSAKA×MILANO DESIGN LINK」です。大丸が手本とするのは、イタリア・ミラノ市で開催される「ミラノ・フォーリサローネ」。これは、家具見本市に合わせて開かれる世界最大級のアートイベントで、約1週間の期間中に100万人規模の人々が訪れるという、文字通り街を挙げての祭典です。

大丸は、この催事を運営管理するイタリアの企業と協業し、そのノウハウを徹底的に学んでいます。今秋は、ミラノ・フォーリサローネの出展作品を中心に展示する予定で、さらに心斎橋エリアにある他の商業施設などでも作品を陳列し、地域全体を巻き込んだ企画とする方針です。大丸心斎橋店の西阪義晴店長は、「彫刻など立体的な作品が多く、展示には広いスペースが必要です。地域の協力なしには成り立ちません」と語っており、「10年、20年をかけて街全体の祭典に育てていきたい」と、長期的な視野での意気込みを表明しています。

心斎橋の街はこの30年間でめまぐるしく変化してきました。バブル崩壊により、個人経営の洋服店などの老舗は減少しましたが、代わりに高級ブランド店の進出で再び活気を取り戻しました。近年では、爆発的なインバウンド消費を取り込むべく、ドラッグストアの集積が進んだのが記憶に新しいところです。しかし、今後、インターネット通販、すなわちEC(電子商取引)の普及がさらに進むことを考えると、「ただ買い物をする」という目的だけで人を呼び込み続けることは非常に困難になるでしょう。大丸を傘下に持つJ.フロントリテイリングの山本良一社長が「ネット時代のアンチテーゼとなる店舗を目指す。(リアルの店舗に)足を運ぶ価値を発信したい」と述べているように、リアルの店舗ならではの体験価値の創出が喫緊の課題となっているのです。

こうした動きは、大丸だけにとどまりません。近隣の商業施設でも、滞在型のコンセプトを打ち出し始めています。たとえば、ルイ・ヴィトンジャパンが2020年1月にオープン予定の新店では、上層階に飲食店や文化催事場が入る計画です。東京でも、高級宝飾ブランドのティファニーが原宿に日本で初めてとなるカフェを設置するなど、百貨店・小売業界全体が「脱・物販」と「体験価値」に舵を切りつつあるのが現状です。

来訪者が街歩きを心から楽しめるよう、行政の後押しも期待されています。大阪市は、心斎橋地域を含む御堂筋の歩道を、2025年を目標に拡幅する計画を進めています。また、地元企業など約150社が参加する御堂筋・長堀21世紀の会も、「オープンカフェや空間演出で、街のステータスをあげていくべきだ」と提言するなど、地域一体となって心斎橋の魅力向上に取り組む姿勢が鮮明です。

SNSでの反響と、街の変貌が抱える「もろ刃の剣」

この大丸を中心とした心斎橋の変革の動きは、SNSでも大きな話題となっています。特に、ミラノの「フォーリサローネ」を手本とするという点には、「いよいよ大阪も本格的なアート・デザインの街になるのか」「心斎橋の歴史ある建物を活かしたアートイベントはぜひ見てみたい」といった、期待感を示す声が多く見受けられます。一方で、「ドラッグストアばかり増えて、昔の老舗が減った心斎橋が寂しい」「買い物以外の魅力が本当に生み出せるのか」といった、不安や厳しい意見も散見されており、街の将来に対する関心の高さがうかがえます。

実際、心斎橋の商業事情は複雑です。ここ数年、海外の高級ブランド時計店の進出が相次ぎ、2018年6月にはスイスの高級時計メーカー、IWCの路面店が開業しました。さらに2017年には、同じくスイスのオーデマ・ピゲなど3ブランドが一気に出店しており、訪日客の増加を背景に、これまで東京・銀座に集中していた高級時計店が心斎橋にも集まり始めています。また、心斎橋筋商店街には、長堀通から戎橋までの約600メートルの間に、大手のドラッグストアが十数店舗も軒を連ねるという特定の業種の集積も進んでいます。

このような特定の店舗や業種の集中は、集客力向上という面では功を奏しますが、別の側面では「もろ刃の剣」となりかねません。特定の客層に偏り過ぎれば、関心のない顧客層は逆に離れていってしまうリスクがあるからです。一部の店舗オーナーからは「ドラッグストアは高額な家賃を払ってくれるが、これ以上は増えてほしくない」という複雑な本音も漏れており、街のバランスをどう保つかという新たな課題が生まれています。

不動産サービス会社CBREの橋川剛シニアディレクターは、心斎橋には「エンターテインメントの要素が必要になっている」と指摘しています。大丸の今回の挑戦は、まさにその「エンターテインメント」と「滞在価値」を生み出すカギとなるでしょう。心斎橋がこの変革を通じて、単なるショッピング街から、アート、文化、そして体験を複合的に提供する魅力的な滞在型都市へとさらなる発展を遂げられるか。大丸が放つ一手が、街全体にどのような波及効果をもたらすのか、今後も目が離せない展開となるでしょう。

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