飛ぶ鳥を落とす勢いで店舗数を増やし、一躍外食産業の話題をさらった「いきなり!ステーキ」ですが、運営会社のペッパーフードサービスから2019年6月28日、衝撃的な発表がありました。2019年12月期の連結最終損益の予想を、従来の34億円の黒字から、なんと15億円の黒字へと大幅に下方修正したのです。これは、前期の1億2,100万円の赤字から黒字転換という見込みではあるものの、企業として大きな減益は避けられない状況を示しています。このサプライズとも言える下方修正の背景には、急速な店舗展開が生んだ予想外の課題が潜んでいるようです。
下方修正の主な要因は、主力の「いきなり!ステーキ」のドミナント出店による顧客の奪い合い、つまり、同一エリア内での自社店舗間の競合激化です。ドミナント出店とは、ある地域に集中して店舗を開設する戦略のことで、物流コストの削減や地域での認知度向上といったメリットがある一方で、今回のケースのように、店舗間の距離が近すぎて共倒れになるリスクも抱えています。これにより売り上げが低迷したことに加え、昨今の厳しい労働環境を反映した人件費の高騰が収益を大きく圧迫している状況です。
特に深刻なのは、既存店の売上高の低迷でしょう。2019年5月の既存店売上高は前年同月比で26.6%減と、実に14カ月連続で前年を下回る結果となっています。この苦境を受けて、通期の売上高の見通しも、当初予想の935億円から764億円へと引き下げられました。また、営業利益についても、従来予想の55億円の黒字から一転して47%減の20億円にまで落ち込む見通しです。これは、店舗数が2019年5月末時点で国内459店と、1年前から196店も増加したにもかかわらず、利益が伴っていないことを意味しています。
さらに、単に店舗数を増やしただけでなく、人材育成が間に合わず、接客などのサービスの質の低下にも繋がっていると見られます。急拡大の裏側で、企業としての足元が揺らいでいる状況と言えるでしょう。これを受け、今期の出店計画も、当初の210店から115店へと半分近くに縮小することが決定されました。この戦略転換は、量から質へのシフトを意図するものと推察されますが、今後の店舗運営と顧客満足度の回復が急務となります。
この業績の下方修正は、SNSでも大きな話題となっています。「まさか、いきなりステーキがこんなことになるとは」「近所に何軒もできて、お客さんが分散したのが原因では?」といった、ユーザーの驚きの声や、すでに感じていた店舗展開の速さへの疑問を呈するコメントが多く見受けられました。また、今回の事態は、外食チェーンの急速な多店舗展開がいかにハイリスクであるかを改めて浮き彫りにした事例と言えます。私は、この下方修正を機に、出店ペースを落とし、まずは既存店のサービスレベルの向上と顧客体験の最適化に注力すべきだと考えます。
海外事業からも撤退へ:米ナスダック上場廃止の決断
業績下方修正と並行して、ペッパーフードサービスは同日、海外事業に関する重要な発表も行いました。アメリカのナスダック市場に上場していた米預託証券(ADR)の上場廃止を申請し、米証券取引委員会(SEC)への登録も取りやめるというのです。ADRとは、米国の投資家が海外企業の株式に投資しやすくするために発行される証券のことです。これは、米国での知名度向上や資金調達を目的としていましたが、米子会社が運営する「いきなり!ステーキ」が現地で苦戦し、7店舗を閉店したことや、ADRの取引量が伸び悩んだことから、上場を維持するメリットが薄れたと判断されたのでしょう。この動きは、海外展開の一時的な縮小、あるいは戦略見直しを示唆していると解釈できます。
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