パンや麺類が値上がりするかも!?小麦先物相場が急騰している理由と私たちの生活への影響

毎日の食卓に欠かせないパンやうどん、パスタの値段が、もしかしたらこれから上がってしまうかもしれません。現在、国際的な小麦の取引価格が驚くほどの高値で推移しており、私たちの暮らしへの影響が懸念されています。世界的な指標となるシカゴ市場の小麦先物価格は、2019年12月に一時、約1年4カ月ぶりとなる高値を記録しました。2020年が明けてからもその勢いは衰えず、高い水準を維持したまま推移しているのです。

インターネット上やSNSでも、このニュースに対して「主食の値上げは勘弁してほしい」「お小遣いがピンチになりそう」といった、家計への負担を心配する切実な声が数多く寄せられています。今回の価格高騰の引き金となったのは、世界の食糧需給を左右するアメリカ農務省が2019年12月に発表した「需給報告」でした。この報告の中で、主要な小麦生産国であるアメリカの在庫や、オーストラリアの輸出見通しが大きく引き下げられたのです。

具体的には、1月初旬の時点で小麦価格は1ブッシェルあたり5.5ドル前後で取引されており、これは直近で安値をつけた2019年9月の水準に比べると、なんと約2割も高い計算になります。専門用語の「先物(さきもの)取引」とは、将来の特定の期日に、あらかじめ決めた価格で商品を売買することを約束する取引のことです。つまり、世界中のバイヤーたちが「これから小麦が足りなくなるかもしれない」と予測して、早めに買いに走っている状況と言えます。

さらに、アメリカの2019年から2020年における穀物年度の期末在庫見通しは、2651万トンへと修正されました。これは前月の予測から108万トンも減少し、約5年ぶりの低い水準に落ち込む見込みです。原因は、小麦の生育期にあたる秋口に、アメリカの主要生産地を襲った深刻な寒波にあります。寒波によって成長が止まってしまい、生産量が伸び悩んだのです。米国産小麦は世界の輸出市場の約15%を占めるため、市場には強い警戒感が広がっています。

もう一つの大きな要因が、オーストラリアを襲っている歴史的な雨不足です。現地では2018年後半から雨が非常に少なく、2019年の年間降水量はなんと54年ぶりの低水準を記録しました。小麦の一大生産地である南西部では深刻な生育不良が発生しており、輸出量は2007年から2008年の穀物年度以来の低水準となる、840万トンまで落ち込むと予測されています。世界の輸出シェア5%を持つ同国の不作は、相場をさらに押し上げています。

しかし、今回の高騰は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)」、つまり実際の需給バランス以上に価格が跳ね上がっているという指摘もあります。実は、世界の小麦の期末在庫自体は2億8900万トンと過去最高水準であり、地球規模で小麦が物理的に不足しているわけではありません。大豆やトウモロコシの相場が低迷する中で、投資ファンドなどの資金が、好材料のあった小麦に集中して買いを入れたという側面が強いと考えられます。

私は、今回の小麦高騰の背景には、気候変動のリスクだけでなく、投機マネーが食料価格を揺さぶる現代の市場の危うさがあると感じています。実際の在庫があるにもかかわらず、局地的な不作や投資家の思惑だけで価格が2割も跳ね上がる現状は、消費者の生活を置き去りにしていると言わざるを得ません。主食の安定供給と価格の安定を守るためにも、私たちは単なる物価の上下として捉えるのではなく、世界の気候や市場の動向を注視していく必要があります。

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