地銀の「マニュアル頼み」はもう終わり!金融庁の方針転換から読み解く地方銀行の未来と自律経営への挑戦

苦境に立たされている地方銀行の経営において、まさに新境地を切り開く絶好のチャンスが訪れています。金融庁は長年にわたり、銀行への立ち入り検査や監督の明確な基準としてきた「金融検査マニュアル」を、2019年12月31日をもってついに廃止いたしました。この大胆な方針転換は、これからの地域金融のあり方を大きく変える契機になるでしょう。

ネット上のSNSなどでは、「これで地銀の融資姿勢が柔軟になるのではないか」という期待の声が上がる一方で、「マニュアルなしで本当にリスクを取れるのか」といった不安の入り混じった反響が数多く見られます。時代の転換点において、多くの人々が地銀の次なる一手に注目している証拠と言えます。

思えば、日本版金融危機の渦中であった1999年7月1日にこのマニュアルが導入された当時は、膨れ上がる不良債権の実態を正しく把握することが最優先の課題でした。銀行には融資先企業の財務状況を厳しく精査し、担保をしっかり確保した上で、貸し倒れに備えた「引当金(将来の損失に備えてあらかじめ準備しておくお金)」を計上することが厳格に求められたのです。当時の喫緊のミッションは、貸出債権の透明化と健全化にありました。

しかし、それから20年という歳月が流れ、銀行を取り巻く環境は激変しています。ピーク時の2001年度には貸出資産の1割近くに達していた不良債権比率は、足元では1%程度にまで劇的に改善しました。その一方で、現在深刻な問題となっているのは、集めた預金をどれだけ融資に回せているかを示す「預貸率(よたいりつ)」が6割台という低い水準で長期低迷している点にあります。

さらに、マイナス金利政策が長期化していることで、貸出金利も右肩下がりの状況が続いています。海外融資や市場運用のノウハウを豊富に持つメガバンクとは異なり、そうした経営資源に乏しい地方銀行の「稼ぐ力」の低下は、目を覆いたくなるほど深刻な事態です。これまでは金融庁もマニュアルを段階的に緩和してきましたが、貸出リスクを恐れる原因になっていた仕組みを名実ともに無くす判断は、非常に適切であると考えられます。

ここからは、地銀が「マニュアル頼み」の姿勢を脱却し、自らの足で立つ「自律経営」を実現するための2つの新課題について解説していきましょう。

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新時代を生き抜くための2つの重要課題

まず1つめは、担保の確保ばかりを優先しない、新しいスタイルの融資です。創業したばかりの新興企業は、一時的に赤字であったり、十分な担保を出せなかったりすることが珍しくありません。だからこそ、決算書の数字には表れないビジネスモデルの将来性や、経営者の熱意を的確に見極める「目利き力」が、これからの地銀には激しく問われることになるでしょう。

そして2つめが、引当金の柔軟な手当てです。中小企業やスタートアップへの融資には当然リスクが伴います。そこで、現在は経営に問題がないとされる「正常先」の企業に対しても、将来の不況を見据えて予防的に引当金を積むといった、柔軟なリスク管理が認められるべきです。現在は税制面などの厳しい制約がありますが、金融庁が公認会計士や税務当局との調整を強力に後押ししていくことが期待されます。

地域経済の守り手としての覚悟

東京一極集中や深刻な人口減少など、地方が置かれた経済環境は決して楽観できるものではありません。もしも地方銀行が前向きな資金供給を止めてしまえば、地域コミュニティの衰退に拍車がかかることは火を見るより明らかです。地銀には、地域の経済を支えるラストリゾートとしての誇りと覚悟を持ってほしいと強く願います。

これまでタブー視されていた同一県内での合併によるコスト削減や、県境を越えた広域連携といった地銀再編の動きは、生き残りのための戦略として大いに評価すべきだと私は考えます。しかし、何よりも本質的で大切なのは、地元に眠っている資金需要を地道に掘り起こす姿勢です。地銀はその原点を今一度肝に銘じ、この難局において地域を照らすという本来の使命を果たしていくべきでしょう。

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