製薬会社と医療現場をつなぐ架け橋である医薬情報担当者、通称「MR」。今、このMRの働き方が劇的な進化を遂げています。大日本住友製薬は2020年1月23日、デジタル技術を駆使して営業活動を抜本的に変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の最新取り組みを公開しました。ネット上では「医薬品の営業もついにデータで最適化される時代か」「これからのMRにはITスキルも必須になりそう」と、未来の医療営業の姿に大きな関心が集まっています。
今回の変革の核となるのが、医師の関心を時系列で可視化する新システムです。医師ごとに専用ページを用意し、Webサイトの閲覧履歴や過去の講演会への参加状況、さらにはMRとの面談内容まで一元的に蓄積します。集まったデータをAIやシステムが分析することで、医師が今まさに必要としている情報や潜在的な課題を予測できるようになりました。これによりMRは、個々の医師にパーソナライズされた、極めて質の高い提案を行うことが可能になります。
さらに、MR自身の活動データも徹底的に可視化されます。タブレット端末などで説明したスライドの順番や、解説に費やした時間などを細かく記録し、医師の反応とともに振り返りができる仕組みを構築しました。これらの基盤を支えるのが、2018年から稼働している「データマネジメントプラットフォーム」です。これは社内の膨大なデータを一元管理するシステムであり、高度なデータ活用には欠かせない重要な土台となっています。
同社は2019年12月に、営業とデジタルを融合させる「マーテック(マーケティング×テクノロジー)戦略推進室」を新設しました。2020年度中には、研究・開発・営業の各部門でバラバラに管理されていた顧客情報を統合する、新しいCRM(顧客関係管理システム)を構築する計画です。これまで縦割りだった情報がつながることで、全社が一丸となって医師をサポートする体制が整います。組織の壁を越えたデータ連携こそが、DX成功の鍵と言えるでしょう。
近年の製薬業界では、医師がインターネットで自ら情報収集を行うようになったため、MRの総数が減少傾向にあります。かつてのような人間力や泥臭い営業だけでは通用しない時代が到来しているのです。しかし、大日本住友製薬の横田京一マーテック戦略推進室長は「会話の端々から真のニーズを汲み取るアナログな仕事は人間にしかできない」と語ります。効率的なデジタルと、血の通ったアナログを融合させたハイブリッドなMRこそ、これからの医療現場に必要な存在です。
筆者は、この取り組みこそがMRの社会的価値を再び高める起爆剤になると確信しています。単なる情報の伝書鳩ではなく、データという武器を持った「医療のコンサルタント」へと進化する好例です。営業を効率化するだけでなく、医師の先にいる患者さんへ適切な医療を素早く届けることにもつながるため、社会的意義は非常に大きいと感じます。デジタルを恐れるのではなく、自身の強みを引き出す相棒として使いこなす姿勢が、これからのビジネスには不可欠です。
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