香川県が誇る日本のソウルフード「讃岐うどん」が、今まさに介護の現場で驚きの進化を遂げています。丸亀市でうどん店を展開する「ウエストフードプランニング」が開発した、自宅や施設で手軽にうどん打ちができる冷凍生地が、シニア世代を夢中にさせているのです。
介護現場において毎日のレクリエーションは、利用者の心身の健康を維持するために欠かせない大切な時間になります。しかし、活動の内容がどうしても固定化してしまい、施設内での生活が「マンネリ化」しやすいという切実な課題を多くの現場が抱えていました。
そうした悩みを打破する存在として、2017年から販売が始まった冷凍うどん生地「うどんレク 元気玉」が全国的な注目を集めています。グループで協力しながらうどんを作り上げるという体験型のアプローチが、高齢者の知的好奇心と身体機能を心地よく刺激するようです。
SNS上でも「おじいちゃんが昔を思い出して職人のような顔つきになった」「自分で作ったうどんは格別の美味しさのようで完食してくれた」など、介護スタッフや家族からの感動の声が数多く寄せられ、その画期的な取り組みへの共感が広がっています。
このうどん打ちの素晴らしい点は、一連の調理工程がそのまま全身の「機能訓練(リハビリテーション)」になる仕組みにあります。専門的な知識がなくても、日常的な動作を通じて身体の諸機能を維持・回復させる効果が期待できるのが、このレクリエーションの最大の魅力です。
例えば、うどんの生地を足で踏む作業は下肢(脚の筋肉や関節)を鍛える絶好の機会になります。さらに、踏み終えた生地を麺棒で平らに伸ばしていく作業は、上肢(腕や肩の周り)を大きく動かすため、高齢者にとって無理のない、適度な全身運動へとつながるでしょう。
うどん文化が根付く香川県内の施設では、お正月やお盆の時期に自宅でうどんを打って客をもてなした記憶を懐かしむ声が多く聞かれます。かつての記憶が呼び覚まされることで脳が活性化され、生き生きとした表情を取り戻す利用者が続出しているのです。
これは単なる調理体験ではなく、過去の懐かしい思い出を語り合うことで脳を刺激し、精神的な安定をもたらす「回想法」という認知症ケアの心理療法にも通じる素晴らしい取り組みだと私は確信しています。自分の得意分野で活躍できる喜びは、何よりの活力になります。
一方でうどんの本場ではない県外の施設においては、本格的な讃岐うどんを自分たちの手で打って味わえるというエンターテインメント性が大ウケしています。大手介護企業のツクイをはじめ、2020年01月24日時点で全国約800もの介護施設や学童保育所に導入されました。
1998年の創業以来、うどんの味を追求してきた企業だからこそ、50分というレクリエーションの時間内に美味しく茹で上がるよう緻密な計算がなされています。あらかじめ職人が最適な状態まで寝かせた生地を冷凍で届けるため、誰でも失敗せずに本場の味を再現できるのです。
さらに、車いすを利用している方でも座ったまま足元で生地を踏めるような工夫や、包丁で麺を切るのが難しい場合に備えた簡易製麺機の導入など、現場の事情に寄り添ったサポート体制も万全です。誰もが主役になれる優しい工夫が、全国へ普及した原動力でしょう。
現在は徳島県吉野川市の吉野川リハセンターをはじめ、広島県や滋賀県、さらには宮崎県まで活用の輪が広がっています。さらに介護が必要になる前の段階から健康寿命を延ばそうという「予防医療」の観点からも、アクティブシニア向けのイベントで重宝され始めました。
地元の伝統文化をビジネスの視点で福祉へと昇華させたこの試みは、超高齢社会を迎えた日本に明るい光を灯しています。五感を使って楽しみ、お腹も心も満たされる讃岐うどんのレクリエーションは、これからも全国のシニアを笑顔にし続けるに違いありません。
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