京都を拠点に活動を続ける劇団「MONO」が結成30周年という記念すべき節目を迎えました。作・演出を担う代表の土田英生氏が手掛ける作品は、現実から絶妙にシフトした世界観が特徴です。派手な演出に頼らず、緻密に計算された会話劇から笑いと悲哀を誘うスタイルは、多くの観客の心を掴んで離しません。ネット上でも「MONOの会話劇は唯一無二」「30年もブレずに面白いのが凄い」と、その独自の劇作術を絶賛する声が数多く寄せられています。
土田氏が紡ぐ物語の本質は、登場人物の全員が脇役であるという点にあります。過度な社会的メッセージやお笑いといった既存の枠組みに囚われず、喜劇とその対極にある境界線を模索し続けてきました。現実のモチーフにフィルターを通すことで、時代を超えて愛される普遍的な戯曲が誕生するのです。実際に、彼らのテキストは毎月日本のどこかで上演されており、そのクオリティの高さが全国の演劇人に認められている証拠と言えるでしょう。
新メンバー参入で進化するアンサンブル演劇の真髄
劇団のさらなる発展を目指し、2018年には20代から30代の若手メンバー4名が新たに加わりました。長年40代後半から50代の男性5人だけで固定されていた座組に、新鮮な風が吹き込まれた形です。MONOが追求する舞台は、役者個人のスタンドプレーではなく、その空間や場に奉仕する演技が求められます。個々の演者が作品のパーツとして調和することで、観客を魅了する美しいアンサンブル、つまり調和の取れた集団美が完成するのです。
2019年の夏には、前川知大氏や横山拓也氏ら個性派の劇作家からプロットの提供を受け、短編集「涙目コント」を上演しました。この挑戦を通じて、他者の脚本であってもMONO独自のカラーに染め上げられるという確固たる自信を得たそうです。この成功を足がかりに、劇団はこれまで距離を置いていた華やかなエンターテインメント作品への挑戦も視野に入れており、今後の展開から目が離せません。新旧メンバーの化学反応が楽しみですね。
ファンタジーを超えた現実との対峙と京都へのこだわり
2020年2月13日からは、兵庫県伊丹市のアイホールにて「その鉄塔に男たちはいるという+(プラス)」の幕が上がります。戦地から逃亡したグループが潜伏生活を送るという物語で、1998年の初演メンバーに新人が加わる構成です。20年以上の歳月を経て、日本の社会情勢は当時の空想を追い抜いてしまいました。土田氏は、政治的なプロパガンダ、いわゆる特定の思想を宣伝するような意図を持たせず、いかに現実と地続きの芸術として提示するかに腐心しています。
演劇をはじめとするアートの役割は、政治的な分断を調停し、人々の間に架け橋を築く言葉を生み出すことだと私は確信します。白黒をはっきりつける硬直した世論に対し、MONOの舞台はグラデーションのある表現で豊かな視点を与えてくれるはずです。また、先輩世代が去る中で「京都の芝居」というオルタナティブ、つまり主流に代わる新たな選択肢としての立場を守り抜いた土田氏の意地には、深い敬意を表さずにはいられません。
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