建物の解体現場において、常に大きな課題として立ちはだかるのがアスベスト(石綿)の処理問題です。2020年01月14日、大手ゼネコンの大成建設がこの問題を鮮やかに解決する画期的な新技術を開発したと発表し、建設業界のみならずSNSなどでも「これで都市の再開発が安全かつ迅速に進む」と大きな注目を集めています。
アスベストはかつて、その高い耐火性や断熱性、そして何よりも安価であったことから、多くの建物の鉄筋や配管に広く吹き付けられていました。しかし、その微細な繊維を吸い込むと肺がんなどの深刻な健康被害を引き起こすことが判明し、2006年には全面的に使用が禁止されています。現在は解体時の厳格な飛散防止対策が法律で義務付けられているのです。
従来工法の限界を打ち破る「水圧」の力
これまでの除去作業は、特殊な薬剤を吹き付けた後に作業員が金属製のヘラで地道に削り落とすという、大変な労力と時間を要するものでした。さらに、粉塵が周囲に飛び散らないように作業スペース全体をビニールで密閉しなければなりません。特に柱と壁の隙間のような狭い場所では、外壁を壊して建物全体を覆う必要があり、コストの肥大化が深刻でした。
そこで救世主として登場したのが、大成建設が誇る新工法「T-ジェット」です。この技術は、緩やかなS字型に加工された特殊な鉄管を用いて、超高圧の水を噴射することでアスベストを一気にはぎ取ります。水圧の単位であるメガパスカルという言葉に馴染みがない方も多いかもしれませんが、1メガパスカルは1平方センチメートルあたり約10キログラムの圧力がかかる強さを示します。
今回の新工法では、なんと180メガパスカルという凄まじい超高圧の水を、圧力を一切低下させることなく先端から放出することに成功しました。この驚異的な水圧によって、頑固に付着したアスベストを根こそぎ除去していく仕組みとなっています。さらに、回転する耐圧ホースを内蔵しているため、一度に広範囲へと効率よく水を噴射できる点が非常に魅力的です。
環境に優しく驚異的なスピードアップを実現
この工法の優れた点は、スピードだけではありません。噴射された水を除去されたアスベスト自体がその場で吸収するため、危険な粉塵が空気中に飛散するリスクを根本から抑え込むことができます。作業後は水分を含んだアスベストをそのまま安全に廃棄すればよいため、現場の安全管理という観点からも非常に理想的なシステムと言えるでしょう。
さらに、大成建設はS字型だけでなく、直角に曲がったタイプの機器も合わせて用意しました。こちらは構造上、水圧こそ15メガパスカルまで低下するものの、S字型ですら進入できないような極めて狭いデッドスペースの作業において、無類の強さを発揮します。こうした現場の声を反映した細やかな工夫が、工期短縮に大きく貢献しているのです。
実際に東京都内の20階建て大型ビルで行われた解体工事では、その実力が遺憾なく発揮されました。従来の方法であれば丸1年はかかるとされていたアスベストの除去期間を、なんとわずか半年ほどにまで縮めることに成功したのです。工期が半分になるということは、それだけ周辺住民への負担や工事コストを劇的に削減できることを意味します。
編集部が注目する未来へのインパクト
インターネット上では「解体工事の騒音や危険な期間が短くなるのは本当にありがたい」「日本の技術力の底力を見た」といった、好意的な意見が相変わらず多数寄せられています。老朽化したビルが急増する現代において、安全性を担保しながらこれほどの効率化を成し遂げた大成建設の功績は、非常に大きいと私は確信しているところです。
高度経済成長期に建てられた建築物の多くが寿命を迎え、これから日本はまさに大解体時代へと突入していきます。負の遺産とも言えるアスベストをいかに安全、迅速、そして低コストで処理できるかが、クリーンな都市再生の鍵を握っていることは間違いありません。この「T-ジェット」が、今後の標準工法として普及していくことを期待しましょう。
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