2020年1月21日、日本のエネルギー政策に一石を投じる素晴らしいニュースが飛び込んできました。東京都内の高校生3人が、原子力発電の是非を真っ正面から見つめたドキュメンタリー映画を自ら製作したのです。彼らは貴重なお小遣いをやりくりしながら国内外の各地へと足を運び、専門家や電力会社の担当者への直接取材を敢行しました。
この情熱が実を結び、2019年末に開催された高校生対象の全国映画コンクールで見事に最優秀作品賞を獲得しています。「正確な知識を届けることで、対立する賛成派と反対派の架け橋になりたい」と語る彼らは、早くも次なる続編の製作に向けて力強く動き出しているようです。
メガホンを取ったのは、東京学芸大学附属国際中等教育学校の5年生で当時17歳の矢座孟之進さんです。同級生2人とともに完成させた映画のタイトルは『日本一大きいやかんの話』という、非常にユニークでキャッチーなものが付けられました。
このタイトルの背景には、湯気(蒸気)の力でタービンを回して発電を行うという、原発の基本的なメカニズムが隠されています。誰もが理解しやすいように、複雑な発電所を「巨大なやかん」に例えたセンスには脱帽せざるを得ません。
映画作りの原点は、学校の社会科の授業で原発の仕組みや歴史を学んだことでした。クラス内で行われた原発稼働に関する討論会では、具体的なデータをもとに必要性を訴える推進派と、福島第一原発事故のリスクを強調する反対派の意見がぶつかり合ったそうです。
議論が平行線のまま終わったことに矢座さんはもどかしさを感じ、「感情論ではなく、対話のための共通の土台が必要だ」と直感したことが、映画製作への強い引き金となりました。世論が二分されるテーマだからこそ、冷静なファクトが必要だと気づいた点は極めて理性的です。
当初は「賛成寄りの中立」というスタンスだった矢座さんですが、福島県浪江町の帰還困難区域を訪れたことで、心境に大きな葛藤が生まれたと明かしています。帰還困難区域とは、放射線量が基準値を超えているため、原則として立ち入りが制限されている地域のことで、原発事故の爪痕を色濃く残す場所です。
そこで出会った「ソーラーシェアリング」の現場が、彼の視野をさらに広げることになりました。これは農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と売電事業を同時に行う画期的な取り組みです。
現地の言葉に触れ、声高に反対を叫ぶのではなく、自然と原発に頼らない社会を構築すればいいのだと深く納得したそうです。映画では原発依存度の高いフランスの大使館関係者にも取材していますが、あえて特定の結論は導き出していません。
「原発への関心が低かった自分自身に気づけたことが収穫であり、この問題に向き合えたことを誇りに思う」という言葉で映画は締めくくられています。一方、取材に応じた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、原発について「経済や環境、技術に政治など、多角的な視点を学べる最高の実践的テーマだ」と若者たちの挑戦を絶賛しました。
SNS上でもこの取り組みは大きな話題を呼んでおり、「大人たちが感情的に喧嘩している中で、高校生がこれほど冷静にアプローチしているのは希望でしかない」「やかんという例えが分かりやすくて素晴らしい、ぜひ上映会に行ってみたい」といった称賛の声が相次いでいます。
私は、この映画こそが現在の日本に最も不足している「対話の可能性」を示してくれたと感じています。どちらか一方の立場を攻撃するのではなく、まずは仕組みを知ることから始めようという姿勢は、すべての世代が見習うべきものでしょう。
若きクリエイターたちの瑞々しい感性と行動力が、硬直した社会の議論を柔らかくほぐしていく未来がとても楽しみに感じられます。なお、この大注目の映画は2020年1月26日に埼玉県の「所沢市こどもと福祉の未来館」にて上映される予定となっています。
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