【一帯一路の闇と光】中国の習近平国家主席がミャンマーを訪問!東南アジア個別切り崩し戦略の思惑と南シナ海問題の行方

アジアのパワーバランスが大きく揺れ動いています。中国の習近平指導部は、トランプ米政権との間で貿易や安全保障を巡る対立が長期化すると見込んでおり、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国への接近を急速に強めています。実は、中国にとってASEANはすでに米国を抜いて世界第2位の貿易相手国に浮上しているのです。中国側には、南シナ海の領有権問題でASEANが一致団結して対抗してくるのを防ぎ、自国に有利な形で交渉の主導権を握りたいという強い狙いが透けて見えます。

こうした緊迫した状況のなか、習近平国家主席が2020年の最初の外国訪問先として選んだのがミャンマーでした。SNS上では「米国と対立するなかで、なりふり構わず味方を増やしにきた印象」「大国の思惑に巻き込まれる東南アジアの国々が心配」といった、中国の動向を警戒する声が多数寄せられています。中国は単に友好関係をアピールするだけでなく、経済的・政治的な結びつきを強めることで、東南アジアにおける自国の影響力を確固たるものにしようと画策しているのでしょう。

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欧米から孤立するミャンマーの「後ろ盾」となる中国の計算

2020年1月18日、習主席はミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問と会談を行いました。会談の席で習主席は「中国は決して内政干渉しない」と断言しています。これは、イスラム系少数民族であるロヒンギャへの迫害問題に関して、欧米諸国から激しい非難を浴びているミャンマーの状況を逆手に取った外交手段と言えます。国際社会で孤立しつつあるミャンマーの強力な後ろ盾となる姿勢を示すことで、相手の信頼を一気に勝ち取ろうという中国側の計算が見事なまでに働いていると私は感じます。

この甘いアプローチに対し、スー・チー氏も「中国と手を携えて前進し、運命共同体を構築したい」と応じ、両国の親密さをアピールしました。これにはネット上でも「スー・チー氏が民主化の星から、中国寄りの現実主義者になってしまったようで複雑」という、かつてのイメージとのギャップに戸惑う意見が見られます。ただ、経済支援を必要とするミャンマーにとって、背に腹は代えられない選択だったのでしょう。一筋縄ではいかない国際政治のリアルがここにはあります。

巨大経済圏構想「一帯一路」が導くインド洋への大ルート

両首脳は、中国の内陸部からミャンマーを南北に縦断してインド洋へと抜ける独自の物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を本格化させる方針で一致しました。この計画は、中国が提唱する広域経済圏構想である「一帯一路(いったいいちろ)」の重要な柱です。一帯一路とは、かつてのシルクロードのように陸路と海路で中国とヨーロッパ、アフリカを結び、巨大な経済ネットワークを作ろうという構想を指します。これにより、中国はアメリカに邪魔されずにインド洋へアクセスできる出口を確保できます。

共同声明には、この計画をこれまでの構想段階から、実質的な建設段階へと進めることが明記されました。具体的には、港湾都市であるチャオピューの開発、国境付近の経済協力区の設置、そして最大都市ヤンゴンの対岸における大規模な新都市開発という3大プロジェクトが軸となります。一方で習主席は、現地住民の強い反発によって凍結されているミッソンダムの建設再開にはあえて触れませんでした。2020年11月に総選挙を控えるミャンマー政府の立場を巧みに配慮した、実に抜け目のない外交手腕です。

南シナ海を巡る攻防と、強まるベトナムの警戒感

中国がミャンマーに急接近する理由は、経済だけではありません。南シナ海での行動を規制する「行動規範(COC)」の交渉において、ミャンマーを自陣営に取り込むことが極めて有益だと踏んでいるのです。ミャンマーは南シナ海の領有権問題において中国と直接の利害衝突がないため、味方に引き入れやすいという特性があります。中国はすでに、陸に囲まれたラオスや経済規模の小さいカンボジアに対しても多額の投資を行い、自国の味方を増やす「個別切り崩し」の多数派工作を着実に進めています。

この動きに対して激しく反発しているのが、2020年のASEAN議長国であるベトナムです。2020年1月17日に閉幕したASEAN外相会議の声明では、南シナ海における周辺国の主権が重要であると強く主張されました。さらにベトナムのメディアは2020年1月18日、南沙(スプラトリー)諸島付近で中国が軍事用のレーダー塔や通信施設を次々と建設している様子を報じています。対話の裏で着実に軍事的な既成事実を積み上げる中国のやり方には、私自身も国際社会のルールを軽視していると言わざるを得ません。

岐路に立つ経済外交と、これからの東南アジア情勢

ASEANの域内大国であるインドネシアに対して、中国は慎重に出方を見極めながらアプローチを続けています。また、領有権を争うフィリピンに対しては、海洋の石油や天然ガスの共同開発を提案し、フィリピン側の取り分を多くするような魅力的な条件を提示して懐柔を試みています。しかし、こうしたお金に物を言わせた仲間作りも、今後は限界を迎えるかもしれません。中国国内では少子高齢化が進んでおり、さらに止まらない軍事費の拡大によって、海外へ回せる余剰資金が不足し始めているという見方があるからです。

SNSでも「中国の資金力も無限ではないはず。借金漬けにされる国が増える前に、ASEANが団結してほしい」という意見が注目を集めています。中国の経済外交に陰りが見え始めたとき、これまでに投資を受けてきた国々がどのような舵取りをするのかが今後の焦点になるでしょう。大国の思惑が渦巻くなかで、東南アジアの国々が自国の主権と経済発展をいかに両立させていくのか、私たちはこれからも冷徹な目で見守っていく必要があります。

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