日本を代表する精密機器メーカーであるキヤノンが、かつてない激動の渦中に立たされています。同社が2020年1月30日に発表した2019年12月期の連結決算は、売上高が前年同期比9%減の3兆5933億円、営業利益は49%減の1747億円と、厳しい現実を突きつけられる結果となりました。長年、同社の屋台骨を支え続けてきたカメラやプリンターといった主力事業が、想定以上の苦戦を強いられていることが浮き彫りになっています。
SNS上では、この衝撃的な減益ニュースに対して多くのユーザーから驚きの声が上がりました。「スマホのカメラ性能が上がりすぎて、デジカメを持ち歩く理由が薄れたのも納得」「オフィスでもペーパーレス化が進み、印刷の機会自体が減った」など、自らの生活実感と重ね合わせる投稿が目立っています。さらに、キヤノンユーザーからは「この苦境をバネにして、あっと驚くような革新的な新製品を開発してほしい」といった、ブランドへの熱い期待やエールも寄せられていました。
スマホ台頭とアジア市場の冷え込みがもたらした二重苦
今回の業績低迷には、世界的な市場環境の変化が大きく影を落としています。特に大きな要因となったのが、私たちの生活に欠かせないスマートフォンの急速な進化です。搭載されるカメラの画質や機能が劇的に向上したことで、コンパクトデジタルカメラを中心に市場全体の縮小が止まりません。キヤノンが得意としてきた一眼レフカメラなども、中国をはじめとする一大消費地での買い控えが直撃し、イメージングシステム部門は22.8%の減収という厳しい着地を見せました。
さらに、中国を中心としたアジア・オセアニア地域での景気減速も、追い打ちをかける結果となっています。同地域における売上高は前年度から18.3%も落ち込みました。ここで解説しておきたい専門用語が、電子回路を基板に焼き付ける「半導体露光装置(ステッパー)」や、スマホの画面に多用される「有機EL蒸着装置」です。これらはスマートフォンの製造現場に欠かせない超精密な産業用機械ですが、顧客企業が設備投資を絞ったことで、この分野の売上も大きく響いています。
不透明な先行きを打破する新ビジネスへの挑戦と展望
追い打ちをかけるように、現在世界を揺るがしている中国の新型肺炎の感染拡大も懸念材料です。田中稔三副社長は「部品の調達網であるサプライチェーンへの影響を恐れている」と言及しており、2020年12月期の業績予想にはまだこの影響を織り込めていません。こうした未曾有の事態において、筆者は同社が従来の「モノ売り」から脱却し、高付加価値なソリューションへとビジネスモデルを抜本的に転換できるかどうかが、今後の明暗を分けると強く確信しています。
厳しい局面ではありますが、キヤノンは2020年12月期に3年ぶりとなる増収増益の挑戦的な計画を掲げました。次世代の成長ドライバーとして期待されているのが、最先端の医療機器や防犯用の監視カメラといった新規事業です。これらの売上比率を全体の28%まで高める方針を示しており、既存事業への依存からの脱却を急いでいます。老舗ブランドとしての誇りと高い技術力を活かし、新たな時代のリーダーとして再び輝きを取り戻す姿を期待せずにはいられません。
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