北海道の豊かな大地を代表する十勝を背負う帯広空港が、今まさに「食」を中心とした劇的な進化を遂げようとしています。2020年1月30日、帯広空港(北海道帯広市)は今後30年間で旅客数を現在の2倍となる133万人に増やし、さらに貨物取扱高を1.4倍の3200トンへと拡大させる野心的な成長戦略を掲げました。
これまでの航空貨物は工業製品が中心でしたが、今後は地元の圧倒的な農畜産業の強みを最大限に活かす方針です。私はこの戦略こそが、地方空港が生き残るための理想的なロールモデルになると考えています。SNS上でも「十勝の美味しいお肉が世界に直行するなんて胸熱」「帯広のポテンシャルなら絶対できる」と、期待に満ちた声が数多く寄せられていました。
中型機復活へのアプローチと鮮度を保つ最新設備
空港の経営を一括して引き継いだ北海道エアポート(千歳市)は、航空会社に対して中型機の導入を働きかけています。実は過去10年間で機材の小型化が進んだ結果、貨物コンテナを扱える大型の飛行機が減少し、貨物取扱高が大きく落ち込むという課題を抱えていました。中型機が復活すれば、利用客の利便性向上と貨物輸送の効率化を同時に実現できるでしょう。
さらに、同社は2049年度までの30年間で、帯広空港へ総額179億円にのぼる巨額の投資を計画しています。特に注目すべきは、地元が誇る農畜産物の「鮮度」を維持したまま出荷できる温度管理設備を備えた貨物倉庫の新設です。これにより、これまで以上に瑞々しく高品質な生鮮品を世界の市場へと送り出す環境が整うことになります。
世界の胃袋を掴む北海道産牛肉の輸出ルート改革
現在、海外で特に需要が高まっているのが、日本が誇る高品質なブランド肉です。北海道は全国最大の牛肉産地であり、2020年春には待望の香港輸出が開始される予定となっています。2019年からスタートした十勝産黒毛和牛の米国輸出は、現状では新千歳空港や羽田空港を経由する陸路と空輸を組み合わせた長いルートを辿っています。
この輸出の起点を帯広空港へとシフトさせることができれば、輸送時間を劇的に短縮できるだけでなく、空港の存在意義をより確固たるものにできるはずです。地元の基盤を活かした独自の物流網を構築することこそが、地域の自立と経済活性化に向けた最も強力な一手になるに違いありません。
観光とビジネスの両輪で描くアジアと世界への架け橋
帯広空港ターミナルビルの社長を務める川田章博会頭は、1次産業が盛んだったゆえに観光振興が手薄だったと振り返りつつも、十勝の観光資源には大きな潜在力があると確信しています。5年後までに台北や上海、伊丹線の開設を目指し、着陸料を乗客数と連動させる独自の施策も導入予定です。さらに30年後には、成田やソウル、香港といった主要都市との通年運航を目指します。
また、超富裕層をターゲットにしたプライベートジェット(PJ)用の格納庫を新設する計画も盛り込まれました。プライベートジェットとは、個人のスケジュールに合わせて自由に運航できる専用旅客機のことで、富裕層の誘致には欠かせません。これによって、道東の大自然を満喫する新たな高級観光ルートが誕生するでしょう。
2018年度の帯広市の年間宿泊客数は127万人を記録し、旭川市を上回る実力を見せています。食を支える農機や食品加工などの周辺産業が盛んな帯広だからこそ、観光とビジネスが融合した素晴らしい未来が期待できます。「向かい風が強いほど飛行機は高く飛べる」という決意の通り、帯広空港の未来は明るく輝いています。
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