調剤薬局の常識を覆す!クオールHDが挑む「駅ロッカー受け取り」とAI・調合ロボットによる医療デジタル革命の未来

調剤薬局大手のクオールホールディングスが、デジタル技術を駆使して業界の古い規制や慣行に立ち向かっています。国の方針による医療費抑制や深刻な人手不足により、従来の経営スタイルのままでは成長維持が難しいという危機感が背景にあります。この「ガラパゴス化」した業界への挑戦に、SNSでは「待ち時間が減るのは本当に助かる」「薬の管理は大丈夫?」といった期待と不安の声が入り交じり、大きな反響を呼んでいます。

調剤薬局はこれまで厚生労働省の手厚い保護のもと、診療報酬という国が定める医療サービスの公定価格に依存してきました。そのため競争原理が働きにくく、利便性の高いドラッグストアに顧客を奪われる状況が続いていたのです。クオールの中村敬社長は、2019年11月の決算説明会で「薬局は小売業で最もデジタル化が遅れている」と強い危機感を表明しました。そこで打ち出されたのが、利用者の利便性を最優先にした抜本的な改革です。

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駅ロッカーで処方薬を受け取る新時代へ

その象徴的な試みが、2020年2月から京都駅で開始される処方薬専用ロッカーでの受け取りサービスです。処方薬とは、医師の診断に基づいて処方される医療用医薬品のことを指します。利用者はあらかじめ薬局で薬剤師から薬の説明を受け、スマートフォンのアプリに暗証番号を発行してもらいます。あとは帰宅時などに駅のロッカーへ番号を入力するだけで、スムーズに薬を受け取れる仕組みです。

昼休みに処方箋を預け、仕事帰りに駅でパッと受け取るような生活スタイルが実現すれば、時に30分を超える薬局での待ち時間から解放されます。しかし、現行の医薬品医療機器等法(旧薬事法)では、処方薬は薬剤師による対面販売が原則です。今回は事前に対面説明を行うことで法をクリアしていますが、前例がないため、理解を示した京都市の保健所管内での限定的なスタートとなりました。

業界内からは「温度管理が必要な薬をロッカーに置いて安全なのか」という慎重な意見も根強く存在します。全国展開へのハードルは高いと言えますが、利用者の時間を尊重するこの取り組みは、顧客視点が欠如していた薬局業界にとって非常に有意義な一歩だと確信します。安全性の検証を徹底しつつ、行政は柔軟にガイドラインを整備していくべきでしょう。

調合ロボットが薬剤師の働き方を変える

さらに同社は、薬剤師の深刻な労働負荷を軽減するため、最先端の調合ロボットの導入を進めています。このロボットは、薬剤師が処方内容を確認してボタンを押すだけで、約300種類もの錠剤から必要な薬を自動で棚から取り出し、粉薬の調合まで行ってくれます。手作業では20分以上かかる粉薬の調合が数分に短縮され、東京・渋谷の宮益坂店では店頭に必要な薬剤師の数を半減させることに成功しました。

現場の薬剤師からも「心理的負担が減り、患者さんへの丁寧な服薬指導に集中できるようになった」と歓迎の声が上がっています。しかし、ここでも古い規制が壁となります。厚生労働省の省令には「薬剤師が1日に扱う処方箋は平均40枚まで」という制限があります。これは手作業が前提だった昭和の時代に、集中力切れによる事故を防ぐために作られた規定のままアップデートされていないのです。

業務の効率化が進んでも、この「40枚ルール」がある限り、薬剤師の生産性を劇的に高めることは容易ではありません。クオールでは、浮いた時間を在宅訪問医療などの対人サービスへシフトさせることで対応する方針です。ロボットが安全に調剤できる現代において、一律の枚数制限を見直す時期に来ているのではないでしょうか。テクノロジーの進化に法制度が追いついていない典型例です。

AI需要予測による「普通の小売業」への脱皮

同社は2020年内を目処に、人工知能を用いた需要予測システムを都内の店舗へ実験的に導入する計画も進めています。近隣の病院の特性や過去の膨大な処方データをAIが分析し、その店舗に最適な薬の在庫量を算出するシステムです。各店に音声認識機能付きのAIスピーカーを配備し、声だけで正確な発注作業ができる未来の薬局像を描いています。

従来の調剤薬局は、一定の処方箋があれば安定した売上を確保できたため、高度な在庫管理の発想が乏しく、無駄な在庫を多く抱える傾向にありました。AIによる緻密な予測が実現すれば、余剰在庫という経営の重荷を劇的に減らすことができます。クオールはこれらのシステムを2020年内に確立させ、2021年以降の実用化を目指すロードマップを敷いています。

調剤医療費の市場規模は2018年度時点で7兆4279億円と極めて巨大ですが、薬剤師の求人倍率は8〜10倍と異常なほど深刻な人手不足が続いています。クオール自身の業績も、2019年3月期には診療報酬改定のあおりを受けて純利益が前年比で21%減少しました。国頼みの甘えを捨て、デジタル技術で「当たり前の小売業」へと脱皮しようとする同社の挑戦は、縮みゆく業界を生き抜くための必然の選択なのです。

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