2020年2月1日に発表された俳壇において、選者である黒田杏子氏が選び抜いた作品群をご紹介します。俳句はわずか17音という短い言葉の中に、詠み人の人生やその瞬間の感興を閉じ込める芸術です。今回紹介される作品は、私たちの日常にある何気ない風景や、時に胸を締め付けるような切なさを、鮮やかに描き出しています。SNSでも「日常を切り取る視点が鋭い」「言葉のチョイスが胸に刺さる」と、多くの俳句愛好家から共感を呼んでいます。
日常の機微を詠む、冬の俳句
まず心惹かれるのは、高岡桃香さんによる「お年玉祖父より届く同じ額」という句です。16歳の高校二年生による初投句とのことですが、毎年変わらぬお年玉の額に、祖父の変わらぬ愛情を感じ取ったのでしょう。事実を丁寧に綴ることで、かえって深い情緒が生まれています。また、丸山克彦さんの「妻病めば薄氷を割る洗濯機」も印象的です。闘病中の妻に代わり家事をする夫の、張り詰めた心情が「薄氷(うすらい)」という言葉に象徴されています。
一方で、重親利行さんの「長生きのひとりぼつちや雪達磨」には、言いようのない孤独と、それを受け入れた強さが滲んでいます。「雪達磨(ゆきだるま)」という可愛らしい季語が、かえって作者の心境を浮き彫りにしているのではないでしょうか。他にも、高層ビルと冬の月を対比させた小林明男さんの句や、冬銀河の壮大さを詠み込んだ木戸月彦さん、石の森市朗さんの句など、冬という季節が持つ澄んだ冷たさと熱い心が共存する作品が並んでいます。
個人的に感銘を受けたのは、中村哲氏の言葉を引用した保井甫さんの句「守りたいことは恕ならむ」初明りです。「恕(じょ)」とは、自分の心のように他者を思いやる心、すなわち「思いやり」を指す儒教の重要な徳目です。激動の時代にこの言葉を噛みしめることは、私たち一人ひとりに深い問いを投げかけているように感じます。俳句は、ただの文学ではなく、今の自分を見つめ直す鏡なのかもしれませんね。皆さんも日常のふとした瞬間を、五七五で綴ってみてはいかがでしょうか。
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