三菱UFJ銀行会長・園潔が語る、歴史に学び危機を乗り越える「リーダーの読書術」

かつて日本の金融界が直面した最大の試練。不良債権問題という荒波の最前線で、懸命に舵取りを担った銀行経営者がいます。三菱UFJ銀行会長の園潔さんです。激動の時代を駆け抜けてきた彼にとって、その羅針盤となったのは常に「読書」でした。歴史書から人間関係の機微、そして危機管理の要諦まで、彼を支えた本棚の秘密を紐解いていきましょう。

園さんが歴史への造詣を深めた原点は、中学生時代に父親から贈られた中央公論社の全26巻『日本の歴史』にあります。刑事として多忙を極めながらも、書斎で黙々と自己研鑽に励む父親の姿に、園さんは深い尊敬の念を抱いていました。歴史の解釈は時代とともに変わりますが、その中にある本質的な教訓は今もなお色あせることはありません。

特に園さんを魅了してやまないのが、飛鳥・奈良時代の空気感です。高校2年生の頃に出会った亀井勝一郎の著書『大和古寺風物誌』は、戦中の古都を歩いた旅行エッセーです。法隆寺や薬師寺といった古寺の魅力を綴ったこの一冊に心酔し、なんと奈良に家を建ててしまうほどでした。忙しい休日に仏閣を巡る時間は、今も彼にとって心豊かなひとときとなっています。

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人間関係の壁を突破する「ヤマアラシの教え」

大学卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行した園さんですが、当初は人付き合いに苦手意識を抱えていました。学生時代はラグビー部の仲間とスクラムを組むことに専念していたため、社会に出てからの人間関係には悩むことも多かったといいます。そんな時に書店で手に取り、衝撃を受けたのが『山アラシのジレンマ』という一冊です。

この本で説かれているのは、人間関係とは「社会的存在としての自分」と「個としての自分」の葛藤であるということ。ヤマアラシが近づきすぎれば互いの針で傷つき、離れすぎれば寒さに凍えてしまうように、適度な距離感こそが人間関係の本質であると喝破しています。これは現代の若者が抱える悩みにも通じる、非常に普遍的な視点ではないでしょうか。

危機管理のプロが選ぶ、組織を導くための指針

1985年に広報部へ配属された際、先輩から勧められた3冊の本は、今も園さんのデスクのそばに置かれています。まずは米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の意見広告をまとめた『アメリカの心』。ビジネスマンとしての生き方を問いかける示唆に満ちています。そして、日本におけるクライシス・マネジメント(危機管理)の先駆けとして知られる『危機管理のノウハウ』です。

危機管理とは、決して経営トップだけが意識すべきことではありません。部下を率いるすべてのリーダーが、自社や自分の状況を徹底して客観視するために必要な責務なのです。園さんの言葉には、組織を預かる者としての重い責任感が滲んでいます。

そして何より、彼が座右の書として深く刻んでいるのが『失敗の本質~日本軍の組織論的研究』です。世紀をまたぐ金融危機に翻弄された際、園さんはまさにこの本で批判されている「指揮系統の混乱」や「過去の成功体験への固執」という過ちを、自身の組織でも目の当たりにしました。多くの迷惑をかけてしまったという忸怩たる思いは、今の日本トップバンクとしての誇りを守るための原動力となっています。

SNS上では、園さんのこうした真摯な読書スタイルに対し、「歴史や古典から現代のビジネス課題を解決する視点は非常に参考になる」「失敗を隠さず教訓として語るリーダーの姿に重みを感じる」といった声が多く聞かれます。時代を超えて語り継がれる教訓を、次の世代へとどう引き継いでいくのか。園さんが見せるリーダーの姿勢は、私たちに多くの希望を与えてくれるでしょう。

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