英国のEU離脱で岐路に立つ産業界——FTA交渉の行方と自動車産業が抱える危機

2020年2月3日現在、英国はついに欧州連合(EU)からの離脱を果たし、関税ゼロの状態を維持する「移行期間」へと突入しました。この期間は、英国とEUとの間で自由貿易協定(FTA)を締結するための重要な猶予期間です。FTAとは、特定の国や地域間で関税を撤廃し、貿易を促進するための協定を指します。もし2020年12月末までにこの合意が成らなければ、無秩序な離脱という最悪のシナリオが現実味を帯びてきます。

特に懸念されているのが、英国経済の要である自動車業界です。SNS上でも、「英国での生産コストが跳ね上がるのではないか」「産業空洞化が加速するのでは」といった危機感の声が後を絶ちません。かつては欧州への輸出拠点として繁栄した英国ですが、離脱の影響で競争力を失う可能性が現実的な脅威として浮かび上がっています。

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忍び寄る「無秩序な離脱」と自動車産業の苦境

2020年1月30日、英政府のゴーブ・ランカスター公領相が経済団体と会談した際、英自動車工業会のマイク・ホーズ会長は「協定締結ができなければ業界の未来は脅かされる」と強い警鐘を鳴らしました。実際、2016年の国民投票以降、英国の自動車生産台数は急速に落ち込み、3年間で約25%も減少しています。ホンダの撤退決定や関連部品メーカーの工場閉鎖など、すでに厳しい現実が突きつけられています。

現状、英国で生産される自動車の約半分がEU向けです。仮に通商交渉が物別れに終われば、完成車には10%もの関税が課されることになります。日本精工の内山俊弘社長が「関税が復活すれば欧州大陸への拠点移転を検討する」と語ったように、企業は生き残りをかけて厳しい選択を迫られています。製造業が雇用を支える英国の地方経済にとって、この打撃は計り知れません。

「完全離脱」後も続くコストと手続きの壁

たとえ2020年12月末までに交渉が妥結したとしても、安心はできません。これまで不要だった英・EU間の通関手続きが復活するため、企業の事務負担やコスト増加は避けられないでしょう。特に、関税優遇を受けるための「原産地証明(その製品がどこで生産されたかを証明する書類)」の手続きは複雑です。三菱マテリアルが大陸側の在庫を積み増すなど、物流の停滞リスクに備える企業も増えています。

一方で、フェイスブックが英国で1000人の新規雇用を発表するなど、IT分野や高度人材の集積地としての魅力は根強いものがあります。しかし、製造業という経済の土台が揺らげば、都市部と地方の格差はより深刻化するはずです。私は、英国が単なる金融やITのハブとしてだけでなく、いかにして「ものづくり」の拠点を維持し、新たな競争軸を見出せるかが、今後の経済成長を分ける鍵になると考えます。

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